研究課題
骨形成不全症(OI)はⅠ型コラーゲン異常に起因する骨脆弱性を示す先天性疾患である。本疾患において破骨細胞機能亢進が報告されており、骨脆弱性に寄与しているがその病態機構の詳細は不明である。申請者らはこれまでにモデルマウスを用いた研究から、骨脆弱性を認めるoimマウスにおいて破骨細胞機能亢進を示唆する初代培養細胞における特徴を見出していた。さらにRNAseq網羅的解析より破骨細胞機能亢進がこれまでに報告されている候補分子の発現増加と、発現制御に関わるシグナル伝達を担う分子の亢進を確認した。そこで初代破骨細胞分化においてこの分子がタンパクレベルで高濃度に分泌されていないか確認するためELISA法で検討した。しかし初代培養破骨細胞の培養上清での検討では、ELISAで検出することができなかった。破骨細胞分化過程で評価に適した時期の決定が必要と考え、時期至適化のための破骨細胞分化誘導評価を行った。骨髄細胞播種翌日にMCSFとRANKLによる誘導を開始し、その2日後よりRANKLによる再度の誘導を行った。そしてその4日後にRNAを回収しqPCRによる破骨細胞分化マーカーの発現量を検討した。対照群としては未分化細胞を使用したが、対照群と比較すると分化誘導群ではカテプシンKが約4倍、NFATc1が約1.5倍に増加していたため、破骨細胞分化は進んでいることが明らかとなった。そのうえで野生型とoimマウス由来初代破骨細胞で比較したところ、カテプシンKが野生型に対して、oimマウスで発現増加が見られた一方でNFATc1は発現量に差を認めなかった。
3: やや遅れている
これまでに同定された候補分子のタンパクレベルでの発現がELISA法で確認できなかったため、当初の計画に比して進捗はやや遅れている。しかし上記破骨細胞分化誘導においては未分化誘導細胞に比して発現の上昇を確認することで、より確からしい手法が確立できた点は本研究が進捗していることの裏付けと考える。
破骨細胞分化を行いRNAseqによる網羅的解析から、初代骨芽細胞分化における網羅的解析により見いだされた分子の影響が見られるか確認する。また初代骨芽細胞分化で行ったシングルセルRNAseqのデータに基づき解析を進め、細胞単位での病態機構を探索する。
一部解析を行う予定であったマウスにおいてGenotypingエラーが認められたため、予定していた解析を次年度に繰り越す計画としている。
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Clinical Pediatric Endocrinology
巻: 31 ページ: 205~208
10.1297/cpe.2022-0027