研究課題
川崎病様の血管炎を惹起するLactobacillus casei cell wall extract(LCWE)を作製し、単球セルライン(THP-1)に添加することで、炎症性サイトカインやマイクロRNAの発現変化をRT-PCRで定量した。THP-1にLCWEを添加することで、LPSと同様にIL-1bやTNF-aといった炎症性サイトカインの発現上昇を認めた。またmiR-181bはLCWE添加後6時間でピークを認めたが、miR-146a-5pはLCWE添加後48時間まで徐々に発現の上昇を認めた。THP-1にmiR-146a-5pのmimicもしくはinhibitorをtransfectionし、その後にLCWEを添加したところ、mimic miR-146a-5pによりTNF-aの発現が低下し、逆にinhibitor miR-146a-5pによりTNF-aの発現上昇を認め、miR-146a-5pの発現亢進によって川崎病様炎症が抑制されることを見出した。次に、LCWEを腹腔内投与することで川崎病モデルマウスの作製を試みたが、安定して冠動脈炎が惹起できなかった。Candida albicans water soluble fraction(CAWS)を腹腔内投与した方が安定して冠動脈炎を惹起できたため、in vivoの検討ではCAWSを用いることとした。CAWS 1mgを腹腔内投与した翌日にマウスの心臓を採取し、コラゲナーゼ処理をして細胞抽出後にセルソーティングを実施したところ、炎症を惹起していないマウスと比較して免疫細胞数が増加し、特に好中球の割合が増加していることを確認した。またCAWSを腹腔内投与する前日に免疫グロブリン2g/kgを尾静脈投与(IVIG)したマウスは、IVIG前投与せずに炎症を惹起したマウスと比較して、好中球の割合が低下していた。
2: おおむね順調に進展している
in vitroの実験では、miR-146a-5pが川崎病様炎症を抑制するターゲットとなりうることが明らかとなった。またin vivo実験では、CAWSを用いて川崎病モデルマウスが安定して作製可能であることが確認でき、CAWS投与後にマウス心臓内の免疫細胞数が上昇し、IVIG前投与により好中球の割合が抑制されることが明らかとなり、来年度にマウス心臓由来細胞のRNA-seqを行うための予備データが得られたため。
川崎病モデルマウスの心臓由来細胞を用いてマイクロRNAのRNA-seqを実施し、IVIGの有無によるマイクロRNAの発現変化を評価することで、in vivoにおける発現調節のターゲットとするマイクロRNAを同定する。
すべて 2023 2022
すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 2件)
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