小児における高二倍体急性リンパ性白血病は様々な遺伝学的特徴を持つヘテロな集団であり、一般に予後良好とされているが、再発症例は非常に難治で予後不良となる症例が多い。ゲノムおよびエピゲノム解析により、再発・難治症例の特徴および治療抵抗性獲得のメカニズムを解明することを目標とした。2022-2023年度は予後良好症例を5症例追加した。 再発・難治症例3例(初発、1st再発、2nd再発の病期の違う検体)と予後良好症例9例(初発の検体)についてコピー数多型の評価、および既存SNPデータを除外した上で、欠失遺伝子、変異遺伝子を評価した。コピー数多型について、もともと高二倍体急性リンパ性白血病は過剰染色体と過小染色体を持っており、すべての症例で異常が認められた。予後良好群と予後不良群を比較したところ、有意な所見は認めなかった。次に欠失遺伝子、変異遺伝子を同定した。病的意義の高い遺伝子変異がG-bandで得られた過剰・過小染色体と関連があるか評価したが、関連は明らかではなかった。予後良好群9例に全て変異がなく、予後不良群の1st再発、2nd再発検体に変異を持っている遺伝子を抽出したところ、74遺伝子がみつかった。そのうち、病的意義の高い遺伝子変異は25認められた。 症例数が限られていることから、真に意義のある遺伝子変異をみつけるためには、解析方法(どの群とどの群を比較するか、など)の検討余地がある。また予後不良群が3例であり同じ患者の病期の違う検体を一群としているため、予後不良群としてまとめた時にバイアスがかかりやすいことに限界があった。 選択された遺伝子変異について、臨床的な意義があるかを細胞実験などで評価を行う予定であったが、研究者が退職するため、資格喪失により研究を進めることが困難となった。
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