細胞培養実験において病的高シェアストレスは、血管内皮細胞マーカーであるPECAM1やCDH5の発現を低下させ、間葉系マーカーであるACTA2やFSP1の発現を増加させ、内皮間葉転換を示した。また、血管内皮細胞マーカーの遺伝子を発現させる転写因子ERGを低下させ、内皮間葉転換を抑えるBMPR2の発現を低下させた。そこでsiRNAを用いてERGの機能低下実験を行うと、正常シェアストレス下において PECAM1、CDH5やBMPR2は低下し、ACTA2の発現が増加し、内皮間葉転換が再現できた。さらに、レンチウイルスを用いてERGの機能亢進実験を行ったところ、病的高シェアストレスにおいて、PECAM1、CDH5やBMPR2は増加し、ACTA2の発現は減少し、内皮間葉転換がレスキューされた。 左-右短絡マウスは、下行大動脈と下大静脈の隣接部を25ゲージ針で穿刺して作成した。術後8週で短絡の自然閉鎖を除外するために腹部エコーを行い、下大静脈内において左-右短絡により生じる乱流が示すモザイクカラーを確認した。またアデノ関連ウイルスの肺特異的なトランスフェクションは luciferaseによる発光を光学画像で確認した。左-右短絡術+luciferaseマウスは右室収縮期圧37.2±1.0 mmHgであり、開腹・閉腹術+luciferaseの21.9 ±0.6 mmHgに比べ有意に高値であった。左-右短絡術+ERGマウスは29.2±0.8 mmHgと有意に改善したが正常化はしなかった。右室重量や肺細動脈の筋性化も同様の結果だった。左-右短絡術術+luciferaseマウスは肺組織で ERGタンパク発現が有意に低下し、内皮間葉転換をきたしており、それらは左-右短絡術+ERGマウスで改善していた。
|