研究実績の概要 |
不死化処理を施した前駆褐色脂肪細胞であるCB1細胞を用いて実験を行った。CB1細胞に対する分化誘導開始日をday0とし、day0からエリスロポエチン(以下EPO)および比較対象としてCL316,243(選択的β3アドレナリン受容体アゴニスト)を投与した。褐色脂肪細胞への成熟度の指標として細胞内の脂肪滴の形成度合を比較するため、day4,6,8にOil Red O染色を行った。Control群と比較してCL316,243投与群では多房性の脂肪滴形成が増加していた(褐色脂肪細胞への分化が促されていた)のに対し、EPO投与群では濃度依存性に脂肪滴形成が乏しかった。day8に抽出した蛋白サンプルでWestern blottingを行ったところ、褐色脂肪マーカーであるPRDM16やPGC1-α、脂肪滴形成のマーカーであるperilipinの発現量がEPO濃度依存性に低下していた。さらに、day2に抽出したmRNAサンプルを用いて褐色脂肪細胞マーカーの遺伝子発現量を比較したところ、EPO濃度依存性にPPARγ,Cidea,Elovl3,CEBPαの発現量が低下していた。このことから、前駆細胞の分化過程においてEPOは褐色脂肪細胞への成熟を抑制する作用を有することが示唆された。次に、day0から分化誘導のみ施した細胞に対して、day6にEPOやCL316,243を投与して比較した。Oil Red O染色では、day6には差を認めなかった脂肪滴形成の様子が、day8ではEPO濃度依存性に脂肪滴が少なくなっていた。mRNA発現量の比較では、褐色脂肪マーカーであるUCP1,PRDM16,PGC1-α,Cidea,Elovl3,FGF21がEPO濃度依存性に増加していた。ある程度成熟した段階においては、EPOは褐色脂肪細胞を活性化させる作用を有することが示唆された。
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