研究課題/領域番号 |
22K15951
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研究機関 | 東京慈恵会医科大学 |
研究代表者 |
伊藤 怜司 東京慈恵会医科大学, 医学部, 講師 (20595194)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 右室不全 / 低酸素 / ミトコンドリア / 心筋エネルギー代謝 / 圧容積曲線 / 血管新生 |
研究実績の概要 |
昨年度に引き続き「低酸素負荷肺動脈絞扼術ラット」のモデル作成を行った。 これまでに行った心室線維化の解析に加え、電子顕微鏡観察によるミトコンドリア形態評価を行い、右室では低酸素負荷および肺動脈絞扼術による圧負荷単独によりミトコンドリアの膨化および構造の破綻が生じることが判明した。しかし低酸素および圧の両負荷においてはミトコンドリア形態の更なる増悪は認められなかった。興味深いことに左室心筋ではこの効果は認められず、低酸素および両負荷により更なる構造破綻が生じていた。 ミトコンドリアDNAをRT-PCRにより解析したところ、線維化率と同様の傾向を認めた。 生理学的評価として、開胸下に心尖からカテーテルを挿入し圧容積曲線を取得し解析を行った。本負荷により飼育環境に関わらず同等の右室圧上昇が得られており、両心室共に収縮能は維持されていた。一方で左室は拡張能の低下傾向を認めた。心筋のエネルギー代謝を比較すると肺動脈絞扼術により右室はSW/PVAが上昇し、左室では大きな変化を認めなかった。 以上より低酸素および肺動脈絞扼術により心室筋ミトコンドリアは傷害されマイトファジーを生じる。マイトファジーは心筋内で炎症を生じ線維化が誘発され、拡張障害から心室機能低下が生じる。両負荷においては更なる増悪傾向は認められず、心室エネルギー代謝においては右室は圧負荷によりエネルギー効率を上げて代償していた。特に左室では低酸素負荷によりEa/Eesが上昇し心室エネルギー代謝において余剰エネルギーの減少が反映されており、ミトコンドリア傷害を反映していると考えられた。 今後、二心室間の差を解明するべく精査を行う予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本実験においてモデルの再現性が良好であり、各種サンプル獲得が予定通りに進んでいる。今後免疫染色や分子生物学的解析を予定しているが、低酸素環境維持に関わる酸素レギュレーターとモニター故障が反復したため中断を余儀なくされたため。
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今後の研究の推進方策 |
これまでin vivoで行う実験はおおむね終了することが出来た。今後は取得したサンプルを用いて病理学、分子生物学的解析を進める予定である。 対象領域は、血管新生とミトコンドリア代謝領域である。 それぞれに関わる領域の試薬の購入を進め、解析機器は当実験室に設置されているため順次進めていく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究はモデルの構築とその解析を下に4年計画で申請を行った。現在2年間が経過し、予定通りサンプル取得が可能であった。途中、低酸素負荷のために使用している酸素レギュレーターおよびコントローラーの故障が生じ中断をせざるを得なかった。 本年度以降は病理学および分子生物学的解析を進めていく予定であり、各種試薬やプライマー購入が本基金の使用目的になる予定である。
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