研究実績の概要 |
背景:髄芽腫においては全脳脊髄照射(CSI)量の低減が喫緊の課題であるが、北米の臨床試験ではCSIを減量した症例は予後が悪化し、有望な予後分子マーカーは抽出されていない。今回我々は、標準治療よりも少ない照射量のCSIにて治療を受けた髄芽腫症例に対して分子遺伝学的解析を行い、予後因子の抽出を試みた。 方法:Japan Pediatric Molecular Neuro-Oncology Groupにて収集した髄芽腫38例の腫瘍検体に対しDNAメチル化解析を行い分子分類、コピーナンバー解析、臨床的予後解析を行った。 結果:解析対象は合計23例の標準リスク、15例の高リスク症例で、観察期間中央値71.5か月であった。CSI線量は標準リスクでは一例を除き18.0Gy、高リスクでは5例が18.0Gy、10例が23.4/24.0Gyであった。分子分類は標準リスク症例ではWNT 4例、SHH 3例、Group 3/4 16例で、高リスク症例は全例Group 3/4であった。Group 3/4症例のうち、予後良好とされるサブタイプI、IV、 VI、VIIに分類された症例は標準リスクでは13例、高リスクでは6例であった。多変量解析にてこれらのサブタイプに分類された症例は有意に予後良好な傾向にあり(Hazard ratio (HR) 0.12, 95% confidence interval (CI) for HR 0.01-0.54, p-value 0.004 for progression free survival (PFS))、特に高リスク症例においてその傾向が強かった。 結語:Group 3/4髄芽腫におけるサブタイプ分類は、標準治療のみならずCSI を低減した症例、特に高リスク症例においても予後良好因子である可能性が示された。
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