研究課題
(1)腸内細菌由来のOMVs による宿主細胞の変化の検証各種腸内細菌を培養し、その培養上清よりOMVsを超遠心法を用いて単離した。Lactobacillus spp.より単離したOMVsを大腸癌細胞株に投与し、細胞増殖能の変化をSRB assayにて評価したところ、大腸癌細胞の増殖抑制が確認された。このことから、これまでに報告されているLactobacillus spp.の抗腫瘍作用のメカニズムの一つとして、Lactobacillus由来の分子XがOMVを介して癌細胞に運ばれ、腫瘍増殖抑制に作用していることが示唆された。そこで、これらの増殖抑制がどのように起こるかについてメカニズムを明らかにするため、アポトーシスの有無、細胞周期変化をwestern blotting、TUNEL 染色、フローサイトメトリーを用いて検証中である。また、OMVsに内包されていると考えられる核酸(RNA, small RNA, DNA)については抽出を行い、同定およびヒト由来核酸との比較を行っている。OMVsの産生量や内包されている物質は培養条件により異なるため、さらに最適な培養条件を検証中である。(2)宿主細胞由来のEVsによる細菌の機能および細菌叢の変化の検討正常大腸上皮細胞株(HCEC-1CT)、各種大腸癌細胞株の培養上清を細菌培養の培地に加え菌増殖能、短鎖脂肪酸(short chain fatty acid; SCFA)、 リポ多糖(Lipopolysaccharide; LPS)産生量の変化を計測するため、現在、各種細胞株の培養上清を細菌に加える際の最適な条件、炎症を惹起する条件を検証している。また、患者由来腸管上皮細胞EVs を細菌に投与するため、腸疾患患者の腸生検由来オルガノイドを作成し、オルガノイドからのEVsが充分に得られる条件を検討中である。
2: おおむね順調に進展している
(1)腸内細菌由来のOMVs による宿主細胞の変化の検証各種腸内細菌を培養し、その培養上清より超遠心法にてOMVsを単離した。Lactobacillus spp.より単離したOMVsを大腸癌細胞株に投与し、大腸癌細胞の増殖抑制が確認された。このことから細菌由来のOMVsが他の種由来の細胞である癌細胞に作用し、その増殖を変化させることが明らかとなった。今後、増殖抑制のメカニズムやOMVsに内包されると考えられる核酸についてさらなる検証が必要であるが、ここまで概ね順調に進捗していると考えられる。(2)宿主細胞由来のEVsによる細菌の機能および細菌叢の変化の検討正常大腸上皮細胞株、各種大腸癌細胞株の培養上清を細菌培養の培地に加え、菌増殖能やSCFA、LPSの産生など細菌の機能変化を見る。これまでに各項目を評価する実験系を検証してきた。さらに各種細胞株の培養条件と細菌培養に添加する際の条件を検証中である。腸疾患患者の腸生検由来オルガノイドのストックも構築されてきており、概ね順調に進捗していると考えられる。
(1)腸内細菌由来のOMVs による宿主細胞の変化の検証腸内細菌株由来OMVsによる腫瘍増殖抑制が確認できたため、2023年度は患者由来腸内細菌を分離培養し、OMVsを単離、そのOMVsを細胞に加えた際の宿主細胞の変化を明らかにする。細胞増殖の変化をSRB アッセイにて、アポトーシスの有無、炎症性サイトカインの発現をqPCR、ELISA、western blotting、TUNEL 染色等で測定する。(2)宿主細胞由来のEVsによる細菌の機能および細菌叢の変化の検討2023年度は、各種細胞株また腸疾患患者由来細胞の培養上清およびEVsを細菌培養の培地に加え菌増殖能、SCFAを計測する。さらに細胞にTNF- α やIFN- γ を加えて炎症状態におき、培養上清またはEVsを細菌の培地に加え増殖能、LPS、SCFA 産生量を比較し、炎症下上皮細胞の培養上清およびEVsによる細菌への影響を明らかにする。特に、正常と腫瘍細胞、正常と炎症下の比較を行う。そして、変化が見られたEVs 内からRNA を抽出し、マイクロアレイにて疾患関連miRNAs およびcircRNAs を同定する。そして同じEVs をマウスに経口投与し、マウスの腸内細菌叢を16S rRNA seq にて解析する。
2022年度内に購入予定であった一部の消耗品が年度内の納入されなかったため、2023年度へと持ち越された。この未使用額については、2023年度の消耗品納入の際にその費用として支払う予定である。
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Journal of Clinical Apheresis
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10.1002/jca.22040