研究課題
令和5年度は、本研究課題の2年目に該当する。1年目に引き続きICIによる肝障害(irAE肝障害)の臨床的特徴と肝生検組織における病理学的解析、またRNA seqのための検体収集を継続した。特にステロイド抵抗性として臨床的にも問題となっているICIによるirAE硬化性胆管炎(irSC)の特徴を、通常のICIによる肝障害と比較することでその臨床的特徴を明らかにしようと考えた。これまでに進行がんに対してICIを使用した1,393例のうちICIによる肝障害(CTCAE v.5にてGrade 3以上) を発症した67例のうち、ICIによる胆管炎は8例であった。irSCでは症状として腹痛が多く、CRP・NLR(好中球リンパ球比)といった血中炎症反応が高いことが明らかとなり論文投稿を行なった(Invest New Drugs. 2023)。更に肝生検診断例における病理学的所見に関して、irSCと非irSC型のirAE肝障害を比較したが、CD3/CD8 T細胞浸潤を伴うspotty necrosisや肉芽腫、血管内皮障害に関しては共通の所見であり、両群で有意差は認めなかった。一方で病理学的胆管炎は、irSCでは全例で認めており、太い胆管レベルが傷害されるirSCにおいても肝生検診断による有用性が示された(論文投稿準備中)。現在は、切除不能進行肝細胞癌患者に対するアテゾリズマブ・ベバシズマブ使用例の肝障害発症例におけるサイトカイン・ケモカインの変化にも着目して検討を進めている。最終年度において肝障害のメカニズム解析として、血中免疫動態と肝組織内の遺伝子発現解析を行い検討結果をまとめたい。
2: おおむね順調に進展している
元々予定していたRNAseqの解析においても順調に組織採取を行い解析できている。最終年度にはその結果をまとめたい。血清に関しても解析が終了したところであり、現在解析結果をまとめている。
最終年度ではこれまでに収集した肝組織の網羅的遺伝子解析をを全て行いまとめる。血清マーカーに関してもirAE発症時と改善時において全てまとめてサイトカイン・ケモカイン測定を行う。得られた結果に関して、国内・国際学会にて発表する。
本年度、必要物品購入に関して、873,178円の予算残高が発生してしまった。RNA seq用の検体がある程度集まってから提出する予定であったため、来年度に全て行う予定である。更にサイトカイン・ケモカインアレイに関しても、全て来年後にまとめて施行する。
すべて 2024 2023
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (9件) (うち国際学会 3件、 招待講演 2件) 図書 (1件)
Hepatology Research
巻: - ページ: -
10.1111/hepr.14043
Investigational New Drugs
巻: 41 ページ: 512~521
10.1007/s10637-023-01366-3
臨床消化器内科
巻: 38 ページ: 799~806
10.19020/CG.0000002668