大阪大学医学部附属病院及び関連施設にて、分子標的治療薬 (生物学的製剤や低分子化合物)を開始した炎症性腸疾患 (IBD)患者を2019年1月から2023年3月まで登録を行い、収集された約500症例につき、2023年5月までにデータの固定を行った。また、血清Leucin-rich alpha-2 glycoprotein (LRG)に関して、保険適用前の症例に関しては保存血清を用いて測定を行った。インフリキシマブ・アダリムマブ・ウステキヌマブ治療をおこなった約200症例については寛解導入期での血清トラフ濃度を測定した。これらの薬剤の寛解導入期での治療効果及び血清トラフ濃度の予測において、既存のC-reactive proteinやAlbuminといった血清マーカーよりも血清LRGが有用であり、これらの薬剤の治療選択に有用であることを見出した。本結果は19th Congress of European Crohn's and Colitis Organisation (ECCO) にて報告した。また、第110回 日本消化器病学会総会及びDigestive Disease Week 2024 (米国)、Japan Digestive Disease Week 2024にて報告予定であり、論文にまとめて現在投稿中である。更に、治療開始前の保存血清がおよそ7割の症例で収集可能であったため、これらを用いて炎症性サイトカインをCytometric Bead Arrayを用いて網羅的に測定しており、治療効果があった群とそうでなかった群でサイトカインの分布の違いを検討し、これらを血清LRGや既存のバイオマーカーで予測することができないか引き続き検討を行なっていく。これらの結果を基礎的な観点からも検討を開始しており、マウスにDSS腸炎やTNBS腸炎を起こし、これらの検討の裏付けを開始している。
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