研究実績の概要 |
腫瘍細胞由来エクソソームに内包するmicroRNAを対象とした体液生検法の開発をテーマとする本研究において、まずは腫瘍由来の核酸濃度が高いと推定されるIPMN症例の膵液を対象として研究を行った。我々は以前、次世代シークエンサーを用いた切除組織の網羅的microRNAの解析により、悪性IPMNの候補マーカーとして膵液中のmiR-10a-5p がIPMN由来浸潤癌(INV)の鑑別に有用であることを報告した。今回、膵液中のmiR-10a-5pを測定することよりIPMNの悪性度を評価した。Low-grade dysplasia (LGD) 10例、High-grade dysplasia (HGD) 10例、INV 5例、IPMN併存膵癌 (PDAC) 5例、画像follow-up例 (Follow) 34例を対象とし、HGD, INV, PDACを悪性群、LGD, Followを良性群と定義した。膵液検体からエクソソームを抽出し、microRNAを分離した後リアルタイムPCRでmiR-10a-5pの発現を測定した。悪性IPMNに関わる因子の解析を行った結果、多変量解析ではHRS個数(OR 4.0, 95%CI 1.3-12.4, p=0.016)、miR-10a-5p高値(miR-high)(OR 4.4, 95%CI 1.0-18.6, p=0.043)、膵液細胞診陽性(OR 24.1, 95%CI 1.9-308.0, p=0.014)の3つが独立した因子として抽出された。HRS個数(0-3点)、miR-high(1点)、膵液細胞診陽性(1点)によるスコアを作成した場合、HRS個数と比較して有意に診断能の向上を認めた(AUROC 0.789 vs 0.669, p=0.019)。膵液エクソソーム内包miR-10a-5pは、悪性IPMNの鑑別に有用であると考えられた。
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