研究課題/領域番号 |
22K16005
|
研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
清原 裕貴 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 助教 (20626379)
|
研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
|
キーワード | 炎症性腸疾患 / 腸管外合併症 / 末梢性脊椎関節炎 / 体軸性脊椎関節炎 |
研究実績の概要 |
本研究は、炎症性腸疾患(IBD)患者のうち腸管外合併症を有する患者における腸内細菌叢の特徴と、臨床経過における特徴を明らかにすることを目的としている。基礎研究領域として、腸管外合併症を有する炎症性腸疾患患者の糞便を用いた腸内細菌叢の解析を、臨床研究領域として腸管外合併症を有するIBD患者における臨床的な特徴を明らかにすることを目指している。当年度は、腸管外合併症の中で最も高頻度にみられる関節症状を有する患者の臨床的特徴を検討した。慶應義塾大学病院においてレセプトで「潰瘍性大腸炎」もしくは「クローン病」の傷病名を有し、さらに2021年5月から2022年5月までの1年間に、同院リウマチ膠原病内科に受診歴のある308名の患者について、後方視的に診療情報を検索した。この308名の患者のうち、IBD unclassifiedなどの潰瘍性大腸炎ないしクローン病の診断に該当しない者、診療録において十分な情報を有していない者を除外し、最終的にリウマチ膠原病内科において、炎症性腸疾患関連脊椎関節炎(以下IBD関連SpA)と診断された52名の患者を解析対象とした。末梢性脊椎関節炎(以下pSpA)は43名、体軸性脊椎関節炎(aSpA)は5名、pSpAとaSpAの混合性脊椎関節炎(cSpA)は4名該当した。pSpAのうち34名(79.1%)で関節エコーが実施され、このうち30/34名(88.2%)で腱付着部炎などの異常所見が認められ、pSpAに対する関節エコーの有用性が示唆された。IBD関連SpAの症状改善が得られた薬剤は、pSpAでは抗Tumor necrosis factor (TNF)-α抗体製剤が32.6%で最も多く、次いで非ステロイド性消炎鎮痛剤のみで改善した症例が14.0%であった。一方でaSpAの症例では全例が抗TNF-α抗体製剤で改善していた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
本研究は、臨床研究領域として腸管外合併症を有する患者における臨床的特徴の検討、基礎研究領域としてそれらの患者の腸内細菌叢解析に分かれる。本研究へ協力をいただける対象患者の組み入れが進まなかったことと、本研究に割くことができるエフォートが当初の見積もりを下回ったため、基礎研究パートである腸内細菌叢の解析への着手に当該年度内に至らなかったことから、現在の進捗状況としては遅れている。
|
今後の研究の推進方策 |
2024年度は、基礎研究領域である腸内細菌叢の解析について、特にIBD関連SpAの診断がなされている患者を中心に進めていく予定である。また、腸管外合併症を有さないIBD患者の腸内細菌叢を対照群として、腸内細菌叢の比較検討を行い、治療薬への反応に対する予測因子としての検討をはじめ、臨床経過との対比を進めていく方針としている。
|
次年度使用額が生じた理由 |
今年度の研究実施内容として、消耗品等の支出を伴わない診療録情報の調査を中心に行ったために、腸内細菌叢解析を想定した当初の支出予定金額を下回った。 最終的な研究における解析対象とする予定には変更はないため、2024年度には、主として菌叢解析などの用途において当該年度の未使用額を使用する予定である。
|