研究課題
慢性肝疾患は二次性サルコペニアの主因であり、特に肝硬変・肝がん患者においてサルコペニアの合併は予後不良因子となるため、肝疾患合併サルコペニアの発症メカニズム・治療方法の開発は急務である。また肝線維化の改善は肝機能の改善をもたらし予後を延長させるが、肝筋連関を介したサルコペニアへの影響は未だ不明である。これまで、C型肝炎DAAsによりSVRが得られた症例のうち、筋肉量が改善しなかった群で高発現するmiRNAを同定した。同定されたmirRNAが筋肉の分化に影響するか検討するために、マウス骨格筋芽細胞(C2C12)を用いて検討を進めた。まず、C2C12を培養し、増殖培地から分化培地に変え培養することにより筋分化後のマーカーであるmyogeninやmyosin heavy chainのmRNA発現が上昇してくることを確認した。続いて、候補miRNAをC2C12にトランスフェクションし、miRNAの発現をPCRにて確認しトランスフェクションされていることを確認した。更に、候補miRNAをトランスフェクションしてから、分化培地に変えて、controlと比較すると筋分化マーカーの発現が有意に低下していることを確認した。また、これらの分化後マーカーについて、ウエスタンブロットでの評価も実施し、mRNA発現と同様に候補miRNAトランスフェクション後の細胞では筋分化後に上昇してくる蛋白発現も抑制されることを確認した。分化抑制の機序を探索する目的に、通常C2C12細胞と候補miRNAをトランスフェクションした細胞でDNAarrayを実施し、変化を認める遺伝子を抽出した。in vitroでは今後、pathway解析を活用したシグナル経路の解析を進める。また、in vivoでの検討としてマウスに四塩化炭素を腹腔内投与し肝線維症モデルを作製した。今後、更に検討を進めていく。
2: おおむね順調に進展している
筋芽細胞における筋分化の検討で筋分化の抑制の結果を得られているため。
マウス骨格筋芽細胞における候補miRNAの筋分化抑制のメカニズム解明としてpathway解析で得られた情報を元に、シグナル経路の関与する部分を検討していき、miRNAの関与する因子を探索する。また、候補miRNAの筋分化抑制がヒトの初代培養骨格筋細胞でもマウスと同様の効果を有するかを検証する。in vivoでは、慢性肝疾患モデルとして作成した四塩化炭素誘導肝線維症マウスモデルにサルコペニアを特徴づける所見が出現しているか、筋分化マーカー発現の違いなどをqRT-PCRを用いて検討する。
コロナ感染の為に研究の一部が滞った為。次年度については、シグナル経路に関する解析を進めるとともに、現在のC2C12細胞はマウス由来の筋細胞株であるため、ヒト初代培養骨格筋細胞を用いた検討も進めていく。具体的にはヒト初代培養骨格筋細胞にmircroRNAがトランスフェクションされるか否か、また、骨格筋細胞の分化に与える影響について、qRT-PCRや蛍光免疫染色、ウエスタンブロットを用いた検討を予定している。
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Hepatology research
巻: 52 ページ: 603~613
10.1111/hepr.13765