研究課題/領域番号 |
22K16021
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
合谷 孟 九州大学, 大学病院, 助教 (30884754)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 急性肝障害 / 急性肝不全 / Extracellular trap |
研究実績の概要 |
肝臓は多彩な機能を有する人体に必須の臓器であり、肝不全は生体の恒常性が維持できず致命的であるがその病態生理については不明な点が多い。近年、活性化好中球がDNAとヒストンを主体とするクロマチン線維を細胞外にネット状に放出する現象(Neutrophil Extracellular Traps: NETs) が報告され、その後、好中球のみではなく好酸球やマクロファージも同様にExtracellular Traps (ETs) を形成することが判明し様々な病態と関連することが報告されている。本研究ではこのETsの肝障害の病態形成における役割を解明することを目的として実験を行った。 Extracellular Trapsのマーカーである血清シトルリン化ヒストン(H3Cit)を当院に保存している患者血清で測定したところ、急性肝不全症例の血清では健常成人と比較してH3Citが高い傾向にあった。また動物実験では急性肝障害モデルであるconcanavalin A投与急性肝障害モデルマウスでは投与後にH3Citの上昇を認め、肝障害とETsの関連を示唆する結果であった。Extracelllar trapsの阻害薬として知られているPAD4阻害薬であるCl-amidineをconcanavalin A投与急性肝障害モデルマウスに投与するとH3Citの低下効果を認めた。免疫染色でもH3Cit陽性細胞の減少を認めCl-amidineによってETsが抑制されていることが確認された。更にCl-amidine投与群では肝逸脱酵素ALTの低下効果も認め肝障害の改善効果と考えられた。 以上の結果からETsは急性肝障害の病態に関わっている可能性があり、またその抑制が治療標的となる可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
上述のように臨床検体を用いた測定、動物実験からETsのバイオマーカーであるH3Citの上昇傾向を認め、ETsと肝障害の関連が示唆される結果であった。阻害薬を用いた実験でもETsの阻害効果と肝障害の改善効果を認めており、研究は順調に進行していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
今年度の実験からETsが急性肝障害の病態形成に関わっている可能性が示唆された。今後はどういった細胞がどのようにETsを形成し、ETs形成が肝障害とどのように関わるかを詳細に解析することでETsと肝障害の病態形成との関わりを解明していく。
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