研究課題/領域番号 |
22K16028
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
戸ヶ崎 和博 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 助教 (50936408)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | オルガノイド / 胃がん / 浸潤 / シングルセル / ライブイメージング |
研究実績の概要 |
腫瘍浸潤は,がんの進行における第一のステップであり,がん死の原因ともなる.腫瘍浸潤のメカニズムについての分子遺伝学的な洞察は,これまでヒト臨床検体の組織解析や動物モデルによってなされてきた.しかし適切な疾患モデルの欠如のためその理解は未だ不十分である.近年,申請者はびまん性胃がん患者からオルガノイドを樹立し,マウスの胃へ同所移植することで,これまで困難であったヒト疾患モデルを確立した.マウスに移植されたオルガノイドは患者検体に類似した組織を形成し,腫瘍内不均一性及び,高い浸潤性を忠実に再現した.本研究では,このモデルを用いて浸潤を担う腫瘍細胞の機能性と動態について明らかにすることを目的とした. 本年度は,患者由来びまん性胃がんオルガノイドを遺伝的に均一な状態にクローニングした上でマウスの胃に同所移植し,腫瘍形成を確認した.この腫瘍についてシングルセルmRNAシークエンス解析を実施し,遺伝子異常によらない腫瘍内のheterogeneityを解析した.ヒト及びマウス由来の細胞がシークエンス解析され,ヒト由来の腫瘍細胞のみをフィルタリングした後,教師なしクラスタリングによって分類し,既知のマーカーに基づいて細胞にアノテーションを付与した.我々はその中で,腫瘍浸潤に寄与しているクラスターを推定し,組織の免疫染色で腫瘍内での分布を確認した.さらに,コホートデータを用いた生存解析から,このクラスターに特徴的に発現している遺伝子群は,予後不良因子であることを確認した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は胃がん浸潤モデルのシングルセルmRNAシークエンス解析を実施し,遺伝子異常によらない腫瘍内のheterogeneityの解析に成功した.その中で, 腫瘍浸潤に寄与しているされるクラスターの候補を同定し,さらにこれを裏付けるデータを得ていることから,研究は順調に経過している.
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今後の研究の推進方策 |
今後は,移植した腫瘍についてVisium (10x Genomics) を用いた空間的発現解析を行い,腫瘍浸潤に寄与しているクラスターの詳細な空間的情報を取得する.また腫瘍浸潤に寄与しているクラスターのマーカー遺伝子を決定し,蛍光可視化した腫瘍細胞を作成する.リアルタイムin vivoイメージングによって1細胞レベルで動的解析を行い,腫瘍細胞の浸潤における挙動を追跡する.これらの結果から浸潤において機能性を有する遺伝子の候補を選定しCRISPR/Cas9システムを用いてノックアウトすることによって,腫瘍浸潤が抑制されるかを前向きに検証し,治療標的となる可能性を探索する.
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