研究課題/領域番号 |
22K16031
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研究機関 | 東京慈恵会医科大学 |
研究代表者 |
島本 奈々 東京慈恵会医科大学, 医学部, 助教 (90908055)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 膵癌 / CD44v6 / 癌関連線維芽細胞 / エクソソーム |
研究実績の概要 |
①膵癌におけるCD44v6+エクソソームに着目した薬剤耐性機序の解明 まず、膵癌細胞株 Panc-1、Bxbc-3、Aspc-1、Capan-1を用いて、各細胞株におけるCD44v6およびCD44v6+エクソソーム発現量の解析を行った。その結果、Bxpc-3では細胞株およびエクソソームのどちらにおいてもCD44v6の発現量が高く、Panc-1では細胞株での発現量は高いものの、エクソソーム上には比較的少ないことが判明した。Aspc-1、Capan-1では細胞株、エクソソームのどちらにおいてもCD44v6の発現量が少ない結果であった。次に、Bxpc-3を用いて、CRISPER-Cas9法を用いたノックダウン細胞株の作成を行った。CD44v6の遺伝子配列に対するgRNA配列を持ったベクターを2種類作成し、コントロールプラスミドにはpx-459を用いた。リポフェクション法でトランスフェクションを行った後に、Puromycin selectionを行い、生き残り、プレート状で他の細胞と離れているsingle cellを選択的にピックアップしクローニングを行った。gRNA#2から作成したクローン細胞株に関しては、real time PCR法にて、コントロールと比較して優位にCD44v6の発現量が低下していることを確認した。現在、gRNA#1のクローン細胞株を作成中である。さらに、倫理委員会に膵癌手術検体の一部をサンプリングする申請を行い(研究番号33-460)、手術検体から針生検の要領で検体を採取し、培養して初代培養癌関連線維芽細胞(CAF)を得た。 ②治療奏功性を予測する薬剤耐性バイオマーカーの開発 血清サンプル収集のため、がんセンター中央病院との共同研究を行う運びとなり、倫理委員会からの承認を得た(研究番号34-380)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2022年度は、今後解析に使用する細胞株の選定・作成を行った。若干の遅れを生じた理由のひとつは、CD44v6の細胞株およびエクソソームでの発現に関して、繰り返し検証を行い、再現性を確認したためである。もうひとつは、CRISPER-Cas9法を用いたノックダウン細胞株の作成にやや難渋したためである。トランスフェクションからPCRでのノックダウン検証までに約1ヶ月を要するため、数回のやり直しに3ヶ月を要した。
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今後の研究の推進方策 |
Bxpc-3細胞株(Bxpc-3 WT)とノックダウン株(Bxpc-3 KO)からそれぞれエクソソームを回収し、これをCAFへ添加することによりCAFの特徴である筋線維能(α-SMA、コラーゲンtype1など)の評価や、産生する細胞増殖因子の発現をRT-PCRやELISAを用いて解析する。またエクソソームにより移送されるCD44v6による膵線維芽細胞の網羅的な遺伝子発現解析のためRNAseqを行い、線維芽細胞の形質変化を包括的にとらえる。同様に、Panc-1細胞株(Panc-1 WT)を用いてCD44v6 overexpression (Panc-1 OE)株を作成し、それぞれエクソソームを回収し上記の検討を行う。次に、各エクソソームで添加刺激した膵線維芽細胞(upper)と膵癌細胞株(lower)で共培養し、癌細胞のGEM投与による50%阻害濃度(IC50%)の変化を解析することで、分泌因子による薬剤耐性誘導を評価する。同定された分泌因子の添加により薬剤耐性誘導された癌細胞のRNAseq解析を行うことにより、膵癌細胞内での薬剤耐性に関与するシグナル伝達を明らかにする。 さらに、KPCマウスを用い、GEM治療に並行してCD44v6WTエクソソーム、CD44v6KOエクソソーム、またはCD44v6OEエクソソームを投与し、エクソソームの違いによるCAFの割合や増殖因子発現量をタンパク発現解析で行うとともに、超音波による腫瘍測定、予後の差、組織学的なCD44v6発現量の差についてIHCで検討する。次に、CD44v6中和抗体を併用することで、上記の結果がエクソソームの他の内包物による結果である可能性を検証する。
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次年度使用額が生じた理由 |
消耗品費として残額を消費することができず、翌年度分として請求した。繰り越した金額15383円については、実験消耗品費(ピペット、チップ)として使用する。
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