研究実績の概要 |
膵癌の腫瘍増殖と線維化は密接に関連し、線維芽細胞が腫瘍増殖を促している。インターロイキン36(IL-36)は、膵筋線維芽細胞から炎症性サイトカインを誘導し、慢性膵炎の線維化と関連していることを申請者の講座から報告している。近年IL-36を抑制するサイトカインとしてIL-38が報告されたが、IL-38の膵炎や膵癌での機能や意義については未だ明らかはない。今回の目的は膵炎及び膵癌でIL-38がIL-36のシグナルを阻害し炎症や線維化を抑制することで膵癌の進展を抑制しうるかを検討することである。慢性膵炎や膵癌患者の血清IL-38と臨床的背景を検討し、線維化の指標としての血清マーカーになりうるかを評価する。またIL-38ノックアウトマウスを使用して、膵炎や膵癌モデルでの検討を行い、それぞれの病態でのIL-38の役割を検討する。この線維化に着目した検討は、膵癌のみならず、他の線維化が問題となるような疾患(乳癌やクローン病、肺線維症)などに対しても応用可能な内容である。 初年度の研究としてはin vitroの実験系で、IL-38の検討を行っている。 膵筋線維芽細胞を用いてIL-36のシグナルを実際にIL-38が抑制可能かを細胞レベルで検討を行った。筋線維芽細胞に対してIL-36を添加することでCXCL1,8のmRNA及び分泌が増加することが知られおり、IL-36と同時にIL-38を複数の濃度で加えることで、IL-36の炎症シグナルを用量依存的に抑制できているかをreal time PCR法を用いて現在検討しているが、想定される結果が得られておらず、他の方法も含めて検討している。
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