研究課題/領域番号 |
22K16042
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
村井 一裕 大阪大学, 医学部附属病院, 特任助教(常勤) (50867314)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | HBV / HCV / 共感染 / scRNAseq / ヒト肝細胞キメラマウス |
研究実績の概要 |
ヒト肝細胞キメラTK-NOGマウスより単離した初代培養ヒト肝細胞(PHH)2Lotに対してB型肝炎ウイルス(HBV)を感染させた。HBV感染10日後に1Lotにつき10000 cellsを回収し、single cell RNA sequenceを施行した。HBV RNA陽性細胞比率はそれぞれ63.4%、67.0%であった。HBV RNA陽性細胞とHBV RNA陰性細胞で有意に発現が異なる遺伝子をそれぞれ342遺伝子、30遺伝子抽出し、2Lotで共通する遺伝子を5遺伝子抽出した。次にC型肝炎ウイルス(HCV)感染ヒト肝細胞キメラTK-NOGマウスの肝組織を用いてsingle cell RNA sequenceを施行した。HCV感染11週後のマウスとHCV感染8週後から3週間抗ウイルス治療を施行し、HCVを排除したマウスそれぞれ1匹ずつを用いて解析を施行した。それぞれ肝組織を擬似灌流法を用いて11380cells、10532cellsを回収し、single cell RNA sequenceを施行した。回収した細胞は3つのクラスターに区別されたがhAlb、HLA-A、TK(チミジンキナーゼ)の発現量からヒト肝細胞分画を同定することが可能であった。さらにヒト肝細胞を擬似時系列解析を行うとHCV感染肝細胞とHCV排除後肝細胞を区別することができ、2つの分画の遺伝子発現を比較するとMX1、IIFIT1、ISG15といった細胞内自然免疫の発現に有意な差を認めた。次にB型肝炎関連肝癌患者2名の非腫瘍部と肝移植ドナー患者2名の外科手術検体を用いてsingle cell RNA sequenceを施行した。合計10654細胞を回収したが、うち肝細胞は76細胞、星細胞も81細胞しか同定することができなかった。肝細胞や星細胞はサンプル調整の行程でほぼ死滅してしまうことが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
HBV感染初代培養ヒト肝細胞を用いてsingle RNA sequenceを施行した。single RNA sequenceによりHBV RNAの陽性・陰性により、HBV感染の有無を区別することができ、HBVによる遺伝子発現の変化をより高感度に評価することが可能であった。またHCV感染ヒト肝細胞キメラTK-NOGマウスの肝組織を用いてsingle RNA sequenceを施行した。ヒト肝細胞キメラTK-NOGマウスはヒト肝細胞とマウス肝組織が混在するが、hAlb、HLA-A、TK(チミジンキナーゼ)の発現量によりヒト肝細胞分画、マウス肝細胞分画、マウス非実質細胞分画を区別することが可能であった。さらにヒト肝細胞分画を擬似時系列解析を行うことによりHCV感染肝細胞とHCV排除後肝細胞を区別することができた。以上のことはsingle RNA sequence以外の方法では解析することが困難であった。今回、single RNA sequenceを行うことで初めて評価することができたため、研究について概ね順調に進展していると判断する。
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今後の研究の推進方策 |
初代培養ヒト肝細胞を用いた実験としてはHCV感染初代培養ヒト肝細胞、HBV・HCV共感染初代培養ヒト肝細胞を用いてsingle RNA sequenceを施行する予定である。またヒト肝細胞キメラTK-NOGマウスを用いた実験としてはHBV感染ヒト肝細胞キメラTK-NOGマウス、HBV・HCV感染ヒト肝細胞キメラTK-NOGマウスの肝組織を用いてsingle RNA sequenceを施行する予定である。また外科手術検体を用いたsingle RNA sequenceでは肝細胞や星細胞はサンプル調整の行程でほぼ死滅してしまうため、パラフィン固定した外科手術検体を用いてsingle cell fixed RNA sequenceを施行する予定である。細胞はホルマリンで固定され透過処理されているので、サンプル調整の行程でデータ品質を保持できるため、肝細胞や星細胞についても解析が可能である。
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