研究実績の概要 |
肝臓は栄養素の代謝および貯蔵に重要な役割を果たしており,肝硬変患者では低栄養状態となる.低栄養の機序として,様々な理由が挙げられている.しかし,肝硬変患者の低栄養と膵外分泌能との関連については十分な検討が行われていない.そこで肝硬変患者の低栄養状態の1つの機序として膵うっ血が外分泌能低下を引き起こしている可能性を考えた.申請者らは,以前に四塩化炭素を用いて作製した肝硬変モデルラットにおいて,膵うっ血により膵が低酸素状態となるため,インスリン分泌の低下をもたらすと報告した(Imamura Y, et al. Hepatol Res. 51(7):775-85, 2021). まず、実験動物モデルを用いて門脈亢進症による膵うっ血と膵外分泌低下との関連について検討をおこなっている.肝硬変モデルラットを用いて,門脈圧が亢進していることを確認し,膵臓が門脈圧亢進症下にあることを証明した.膵外分泌機能評価のため,分泌された膵液採取を試みたが,膵液採取は十分な量の確保が難しく,病学的な膵外分泌能の評価を検討している. さらにヒト肝硬変患者において,腹部超音波を用いて,膵粘度の測定をおこなっている.さらに,膵外分泌能の評価のために便中エラスターゼ-1を測定し,膵粘度との関連を検討している.現在さらに症例を目標症例数まで症例を集積中である. また,剖検例での膵組織の検体を用いて,病理学的な変化について検討をおこなっている.肝硬変患者において,膵内の血管壁の厚さに変化があることが明らかになった.さらに膵外分泌との関連を評価・検討する.
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