研究実績の概要 |
正常食道粘膜・異形上皮・早期食道癌病変における発癌と増殖に影響を及ぼす細菌を検討するため,まずサンプルの適正の検討と実験手技の確立を目的として,食道癌におけるフゾバクテリウム属の発現と臨床病理学的特徴を解析した. 当院の食道癌組織検体65例を用いて病変部に含まれるフゾバクテリウム属の発現量の解析を行った.食道癌組織におけるフゾバクテリウム属の陽性率は61%であった.その発現に関連する臨床病理学的因子の検討では患者の性別や年齢,病変の部位,腫瘍径では有意差は得られず,Stageが進行するほど検出される割合が増加することが示された.腫瘍部の分子生物学的異常とフゾバクテリウム属の発現の関連の検討では,KRAS遺伝子変異,BRAF遺伝子変異,PIK3CA遺伝子変異,MLH1のメチル化,マイクロサテライト不安定性との関連は認めなかった.また,周囲の正常粘膜との発現量の比較では有意差は示されなかった.以上から,フゾバクテリウム属は食道癌においては発癌よりも主に腫瘍の増大に寄与していると考えられた. 早期病変の更なるサンプリングのため,当院における食道癌内視鏡治療検体の収集を行い,その検体からのマイクロダイセクション法を用いて病変とそれに隣接する正常粘膜部を採取した.そのサンプルからDNA,RNA抽出し,遺伝子変異やメチル化異常などの分子学的異常の解析を継続して行っている.また,患者の臨床病理学的因子の抽出を並行して進めていた. 以上が廃止申請までに実施した研究とその実績である.
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