研究実績の概要 |
これまでに我々は肝癌細胞株のミトコンドリア内にSGLT2が発現している事、SGLT2阻害剤を肝癌細胞株に投与することで肝癌細胞株の増殖が抑制される事、肝癌細胞株の増殖抑制効果が、アポトーシスではなく、細胞周期の低下による増殖能の低下によるものであること、さらにメタボローム解析にてSGLT2阻害剤は複数の代謝経路を変更させる効果を確認した。 さらに詳細に代謝経路の変化を追求するためにプロテオーム解析を同様の実験系で行い、2つのオミックス解析を用いることでより詳細な代謝の変化を確認した。明らかに変化した経路として、1)電子伝達系、2)脂肪酸代謝経路、3)DNA合成経路であるピリン、ピリミジン経路、の3経路が主に代謝の変化を起こしていることを明らかとした。 さらに我々は、病理部と共同で研究を行うことでヒトの組織を用いてSGLT2の発現についての確認を行った。腎臓の近位尿細管以外にも、心筋組織、脾臓組織、正常ヒト肝組織にもSGLT2が発現していることが確認できた。さらには胆管細胞にもSGLT2が発現していることが確認できた。 一方でMultiplex解析を用い、肝細胞株であるHep3BおよびHuh7において、共にSGLT2阻害剤投与群とコントロール群におけるケモカインの発現量を比較した。その結果、SGLT2阻害剤を肝癌細胞株に投与することでCXCL1, 8, 10, M-CSFといった癌増殖に関与するサイトカインが減少することが明らかとなった。 これらのことからSGLT2阻害剤は肝細胞癌を直接的および間接的に増殖抑制を起こす可能性が示唆された。
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