研究課題/領域番号 |
22K16060
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研究機関 | 旭川医科大学 |
研究代表者 |
青沼 達也 旭川医科大学, 医学部, 助教 (90646001)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | long noncoding RNA / がん治療関連心機能障害 |
研究実績の概要 |
アントラサイクリン系抗がん剤としてエピルビシンの治療を受けた後にトラスツズマブ(Trastuzumab:TZB)治療を受けた乳がん患者を対象として症例登録をしているが、本症例の登録基準を満たす患者は半年強で6名と研究開始時の予想を大きく下回った。しかし、少ない症例登録者の中でもアントラサイクリン治療終了時には心臓超音波検査で測定した左室駆出率は59%と左室収縮能が保持されていたが、TZB治療後に左室駆出率が43%まで低下したTZB関連心毒性(+)症例が確認された。同症例ではTZB治療終了時は採血でのトロポニンTやNT-proBNPといった心筋障害や心不全のバイオマーカーの異常はなかったが、TZB関連心毒性(+)としてTZBの一時中断と心保護薬を開始して左室駆出率は改善している。各症例で回収した血漿サンプルは-80℃で保存しており、適宜RNAを抽出して後のlong noncoding RNAアレイ解析に用いる予定である。
ヒト培養心筋細胞株は当初予定していたAC-16 Human cardiomyocyteではなく、Promo cell社のHuman cardiac myocyte(HCM)を用いて心筋細胞のTZB心毒性を評価する系を構築している。HCMにドキソルビシン(Doxorubicin:DOX)を5-10μMで4時間、次いでTZBを1-10 μMで20時間を投与する系でTUNEL法による細胞のアポトーシス誘導、細胞内ROS産生をそれぞれ評価した。DOXによってHCMのアポトーシス陽性細胞数、細胞内ROSが有意に増加することが確認されたが、DOX後にTZBを投与してアポトーシス陽性細胞、細胞内ROSをDOX単剤より増加させる実験系は未だに確立できていない。反復回数が少なく有意差は示されていないが、定量PCRによる解析ではDOXによる心毒性で上昇すると報告されているlong nocoding RNA MHRTはTZBを投与したHCMで上昇する可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
COVID-19感染症対策のため、外来の乳がん患者が制限されて患者登録数が予定していたよりかなり少なくなってしまったため。次年度は外来患者制限が緩和されるため登録証例数が増加すると予想される。
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今後の研究の推進方策 |
外来患者制限解除後は抗がん剤導入される新規の乳がん患者が増加しており、引き続き今までの症例登録を継続するが、患者リクルート方法に改善点が無いか見直しを行う。十分なTZB関連心毒性(+)症例が確保できたらアレイに用いるコントロール症例のリクルートも行う。
ヒト培養心筋細胞株のTZB心毒性を評価する系に関しては、TZBの暴露時間延長などの条件変更を行い細胞のアポトーシス誘導やROS産生が増加するか再確認するが、当初予定していたミトコンドリア機能評価も行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
推定より症例登録数がかなり少なく、凍結血漿サンプルのRNA抽出をまだ行なっていないため。RNA抽出の際には大量の試薬を使用することが予想され、次年度は使用額が増加することが予想される。
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