深部静脈血栓症に伴う血栓後症候群の病態は、静脈弁機能不全が中心と考えられるものの十分に検証されていない。疾病対策のためには、早期診断に有用な予測因子の同定や病態解明が求められる。本研究では以下の2つの研究課題について検証する。(1) 深部静脈血栓症患者の血栓後症候群発症に関連する予測因子を解析し、(2) マウス生体血栓モデルを利用した静脈弁機能変化を検証する。 当該年度は、当院で抗凝固療法を開始した中枢性の下肢深部静脈血栓症患者における血栓後症候群合併例の患者背景や血液検査プロファイル、下肢静脈エコー所見の評価によって予測因子を検証した。また抗凝固療法の適応となる中枢性の下肢深部静脈血栓症患者を対象として、経時的に臨床所見や下肢静脈エコー所見に基づいて血栓後症候群合併の有無を評価し、患者背景、画像所見、血栓性素因項目、凝固線溶系マーカー、炎症性サイトカインについて検証した。血栓後症候群合併は、下肢静脈エコーや造影CTにおける血栓量や分布、また発症時の有症状が予測因子となる可能性はあるが、少数例の検討に留まるため、追加の観察期間を要する。 またマウス下腿静脈結紮による静脈血栓モデルを用いた静脈弁部を含めた血栓の生体イメージングによって、血栓形成後に弁部の逆流を含む血流変化や血管リモデリングによる弁機能不全を合併するか検証した。静脈弁の蛍光イメージングに成功したが、微小な弁の病理学的評価に難渋した。
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