研究課題
炎症マーカーの一つであるpentraxin 3(PTX3)は、C反応性タンパク(CRP)に比べより血管に特異性が高いと言われており、動脈硬化を基礎とする心血管疾患の優れたマーカーとして注目されている。近年PTX3は炎症マーカーとしてのみならず、液性自然免疫の構成因子として心血管疾患の病態形成に関与することがわかってきており、我々もその基礎的研究を進めてきた。一方、大動脈瘤では血管壁における慢性炎症が壁の脆弱化と瘤の拡大をきたすことが知られており、病態形成の構成因子としての様々な炎症性メディエーターや細胞外基質代謝酵素、細胞内情報伝達物質などが治療標的分子として提唱されている。本研究の目的は、ApoE・PTX3両欠損マウスおよび、人工血管置換術施行時に採取されたヒトの大動脈瘤組織を用いて、腹部大動脈瘤の形成・病勢進展におけるPTX3の役割を分子生物学的に明らかにすることである。初年度は、同意が得られた大動脈瘤を含む動脈硬化性疾患症例の登録を行ない、血液学的検査、生理学的検査データの収集、血液検体の保存を行なった。またその後の心血管イベントに関する追跡も行なった。動物実験については、ApoE単独欠損マウスとPTX3単独欠損マウスを交配し、表現形を解析し両遺伝子ともに欠損がホモ接合体のマウスの作成を試みた。野生型マウス、ApoE欠損マウス、PTX3欠損マウスに対し、Angiotensin Ⅱを注入したマイクロ浸透圧ポンプを両肩甲骨中央部皮下に植え込み、28日間皮下投与を行なった。
3: やや遅れている
PTX3・ApoE両欠損マウスの個体獲得数が多くないため。またヒトの大動脈瘤検体は単施設では多くないため。
今後、PTX3・ApoE両欠損マウスおよびヒト大動脈瘤検体の獲得数を増やし、瘤組織におけるMMP-2および9の発現を、ゼラチンザイモグラフィー、in situザイモグラフィーにて解析する。また、PTX3の炎症シグナルへの関与を調べるため、p38 MAP kinase、phospho-p38 MAP kinase、extracellular signal-regulated kinase1/2 (ERK1/2)、phospho-ERK1/2、JNK、phospho-JNK、NFκB p65の発現をウェスタンブロット法にて解析する。
学会発表がwebで行われたために旅費を使用しなかったため、次年度使用額が発生した。次年度の学会等の旅費として使用する予定。
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