研究課題/領域番号 |
22K16080
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研究機関 | 奈良県立医科大学 |
研究代表者 |
中田 康紀 奈良県立医科大学, 医学部, 助教 (70812379)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | p22phox / 心不全 / 酸化ストレス / SERCA2a |
研究実績の概要 |
心不全患者では,心筋虚血や交感神経緊張に伴うカテコラミンの上昇,レニン・アンジオテンシン・アルドステロン系の活性化などにより,心筋で活性酸素(reactive oxygen species: ROS)が発生している.不全心筋において発生したROSによる酸化ストレスは,心筋に肥大,アポトーシスを引き起こし,心不全の病態悪化につながっている.今回は,活性酸素の主要な供給源となっているNADPHオキシダーゼ(NOX)とヘテロ二量体を形成している「p22phox」に関して研究を行った.ヒト心不全患者の心臓サンプルでp22phoxの発現を調べたところ,心不全患者では健常者に比較し,有意にp22phoxの発現が亢進していることを認めた.また,心筋特異的p22phoxノックアウトマウスでは,心筋細胞内のカルシウムハンドリングの中心的役割を果たしている心筋筋小胞体Ca2+-ATPase(SERCA2a)の発現量が低下しており,p22phox はNOXの安定化だけでなく,SERCA2aの発現維持に関わることが示唆された.実際,質量分析では,p22phoxと結合するタンパク中で最も量が多かったのがSERCA2aであった.心筋特異的p22phoxノックアウトマウスに,アデノ随伴ウイルスを用いてSERCA2aを投与することで,心機能低下を防げるデータも得られてきている.心不全時のSERCA2a発現低下にp22phoxが関与している可能性があり,p22phox発現レベルの至適化が心不全に対する新規の治療法になりうると考えられる.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
p22phoxとSERCA2aの関与について様々なデータが得られており,全体としてはおおむね順調に進展していると言える.
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今後の研究の推進方策 |
引き続き,p22phoxによるSERCA2aの発現調節メカニズムの検討を行っていく予定である.
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