心不全患者における酸化ストレスの増加は、心筋筋小胞体Ca2+-ATPase(SERCA2a)の発現量低下の主な原因となっている。NADPHオキシダーゼ(NOX)複合体は、心筋細胞における活性酸素種(ROS)の重要な供給源であり、NOX1-4の膜貫通パートナーであるp22phoxは、複数のNOX複合体におけるROS産生において重要な役割を果たしている。そこで、我々の研究では、p22phoxの欠失が酸化ストレスの減少と心臓圧負荷時のSERCA2aレベルの安定化を通じて心不全を軽減するかどうかを調べた。野生型(WT)マウスと心臓特異的p22phoxノックアウト(p22phox-cKO)マウスに偽手術または横行大動脈狭窄(TAC)を施したところ、TAC後4週目のp22phox-cKOマウスの心臓では、WTマウスと比較して酸化ストレスレベルが低下していた。しかしながら、予想に反して、TAC後のp22phox-cKOマウスは、肺うっ血が増加しており、心筋線維化および左心室駆出率の低下がみられ、WTマウスよりも死亡率が高かった。興味深いことに、p22phoxがSERCA2aと直接相互作用することも明らかになった。p22phoxの欠失は、SERCA2aのシステイン酸化を引き起こし、そのユビキチン化とプロテアソーム媒介分解を促進することも示唆された。 今回の研究は、心臓におけるSERCA2aの安定化におけるp22phoxの新規かつユニークなNox非依存性機能を示している。p22phoxの欠失は、SERCA2aシステインの酸化および分解の増加を通じて心不全を悪化させた。この発見は、酸化ストレス下でのSERCA2aの安定性におけるシステインの役割に関する貴重な知見であり、心不全治療の新たなアプローチにつながる可能性がある。
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