研究実績の概要 |
本研究における、初年度の目標は①既存コホートからの左室収縮能改善に寄与するリスク因子の検出、②術中の循環動態モニタリングの指標の収集、③高感度トロポニンTや高感度CRPの収集である。①に関して、273例のLVEF<50%症例を解析し、アウトカムの設定は収縮能の正常化ではなく、術前後のLVEF値の変化量に設定(⊿LVEF%)。5%刻みで4群に分けた。器質的心疾患の有無を含む4つの独立予測因子がえられ、共通オッズ比をそれぞれ算出した(未発表)。②に関しては、持続性心房細動55例の術中モニタリング(ProAQT)を行いDC前後でのパラメータの変化を観察。CO, CI, dP/dtなどの指標を収集した。こちらは左室収縮能のみならず術前後拡張能との関連も検討予定である。③に関しては、残念ながら高感度CRPの収集は途中で中断を余儀なくされた(検体が不採用となった)が、高感度TnTに関しては、約200例弱の収集が完了している。その後の心機能との関連を検討する予定である。2023年の日本循環器学会学術集会ではComparison of long-term outcomes in heart failure patients with preserved and recovered left ventricular ejection fractions after atrial fibrillation ablationという演題名で、収縮能が改善した患者ともともと維持された患者のアウトカム(心房細動アブレーション後)を比較した内容を発表。収縮能が改善し得るいわゆるHFrecEFの予後はまだ未解明な部分が多く、同分野に一石を投じる発表内容であったと考えている。次年度以降は、循環動態モニタリングの指標とトロポニンT収集を継続し、漸次アウトカムとの関連性を検討していく。
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