研究課題/領域番号 |
22K16114
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研究機関 | 自治医科大学 |
研究代表者 |
成田 圭佑 自治医科大学, 医学部, 助教 (60912756)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 高血圧 / 心不全 / 血圧脈波 |
研究実績の概要 |
本研究において、高血圧患者および心不全患者に対して、血圧測定を行いながら心機能を推定する方法として、申請者らが開発に携わった”新規マルチセンサー搭載自由行動下血圧計”による脈波解析を行った。具体的には血圧測定時に血圧測定カフから得られるカフ圧の拡張期容積脈波を用いて解析を行った。この容積脈波を前方に向かう駆出波と、血流が動脈を反射することで得られる反射波に分離し、前方に向かう駆出波の波形から心機能の推定を行った。2022年度に新たに50名以上の被験者を登録することができ、合計の登録者数は300名弱となった。本研究より、血圧脈波の解析によって、駆出波の波形の面積を動脈硬化の状態を表す脈波の振幅の影響を除した新規血行動態パラメータであるSF/AMと心エコー検査によって評価される駆出率(EF)に有意な関連性を認めた。登録者のうち、血圧脈波指標と心機能評価のデータに欠損のなかった80名において相関係数R=0.5と中等度以上の有意な関連性を認めた。他に、心不全患者の治療前後において、心機能の改善と併行して、上に述べたSF/AMの値が上昇していることを発見した。これらの結果については、2022年10月に開催された第29回国際高血圧学会学術集会で発表(計2演題:”NOVEL HEMODYNAMIC INDEX OF ABPM-OBTAINED PULSE WAVEFORM; EVALUATION OF CHANGES IN CARDIAC FUNCTION BEFORE AND AFTER TREATMENT OF HEART FAILURE”ほか、いずれも申請者が筆頭演者)を行った。さらに、同国際学会において心機能改善の観察を行った1演題については、Case Report Awardを受賞した。また、2023年3月時点で査読付き英語雑誌に本研究による論文を投稿中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究において、高血圧患者および心不全患者に対して、血圧測定を行いながら心機能を推定する方法として、申請者らが開発に携わった”新規マルチセンサー搭載自由行動下血圧計”による脈波解析を行った。具体的には血圧測定時に血圧測定カフから得られるカフ圧の拡張期容積脈波を用いて解析を行った。この容積脈波を前方に向かう駆出波と、血流が動脈を反射することで得られる反射波に分離し、前方に向かう駆出波の波形から心機能の推定を行った。脈波解析の手法については、80名の被験者を対象とした中間解析の結果、心エコー検査上の心機能パラメータである駆出率(EF)と相関係数R=0.5と有意な関連を認め、ある程度血圧脈波指標については一定の解析手法を確立することができた。さらに2023年3月現在も血圧測定デバイスの開発に携わった技術者と協力し、より精度の高い心機能推定を得られる血圧脈波指標について検討中である。研究登録についてだが、心不全患者を対象として、2022年度に新たに50名以上の被験者を登録することができ、本研究の合計の登録者数は300名弱となった。本研究では研究対象者が心不全患者に限定されるため、被験者の登録は容易ではないが、被験者の登録作業は現在も精力的に行っており、さらに被験者を増加させていく予定である。目標登録者数の500名には達していないが、脈波解析の手法検索も含めて考えると現在の研究進捗状況はおおむね順調である。
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今後の研究の推進方策 |
本研究の今後の推進方策について、主に2点を考えている。まず第一点目には、血圧脈波解析手法をさらに発展させること。次に第二点目としては被験者のさらなる登録、被験者数の増加である。 第一点目の血圧脈波解析について、本研究では従来の血圧脈波計ではなく、24時間自由行動下血圧と家庭血圧を測定可能な通常の上腕カフ式の血圧測定系を用いている点に新規性がある。カフ容積脈波から得られる現状の心機能推定を目的とした血圧脈波指標として、より精度の高い脈波指標または脈波の検出法がないかを検討すること。さらに、血圧脈波指標の次なる発展として中心動脈圧の推定や動脈硬化の度合いの推定も今後の検討課題である。 第二点目としては被験者をさらに募り登録者数を増やしていく必要がある。こちらに関しては申請者のみではなく新たに被験者登録が可能な研究実施医師や協力者を募ることでさらなる登録者数の増加を目指す。現在の300名弱の登録者数でもある程度は横断的解析が可能であり、横断的解析による論文作成や学会発表を進めていく。また、心不全の増悪や入院などの新規イベントを検出するため、縦断的な解析を行う予定である。被験者は心不全患者であるため、申請者のこれまでの研究から500名いれば心不全再増悪のイベント発生はそれなりの数が見込まれるため、当初の予定通り500名を目指して被験者登録を進めていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
被験者の登録に際して、当初予定していた血圧測定機器の台数が予想された台数ほどは必要ではなかった点や、被験者登録に際して申請者が協力することで、予定された人件費よりも少ない額で実施可能であった。また、国際学会が日本開催(2022年10月、第29回国際高血圧学会学術集会、京都)であったこともあり、渡航費などの旅費も想定より少なかった。 2023年度については、国際学会参加の渡航費用や、検査の際に使用する消耗品、また、現在、本研究課題に関する解析結果について、論文執筆中であるが、その英文校正費用やOpen Access Feeとして使用する予定である。
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