超高齢社会を迎えた我が国では心不全患者の爆発的な増加に直面している。しかし心不全患者の約半数を占める左室駆出率が保たれた心不全(HFpEF:Heart failure with preserved ejection fraction)に対しては予後改善につながる治療法が確立されていない。申請者はこれまでにSignal transducer and activator of transcription 3(STAT3)活性化サイトカインであるInterleukin-22(IL-22)がHFpEFの重要な病態である左室拡張障害や心肥大を起こすことを見出している。高脂肪高ショ糖食(High fat high sucrose 食:HFHS 食)が左室拡張障害を起こすこと、高脂肪食が腸管炎症を起こすこと、腸管にIL-22産生細胞が存在し腸管修復に重要な働きをしていることから、HFHS食による左室拡張障害の病態におけるIL-22の役割を明らかにすることを目的に、本年度は以下の実験を行った。 まずHFHS食による左室拡張障害におけるIL-22の影響を調べるために、WTマウスおよびIL-22KOマウスにHFHS食を4ヶ月摂取させ心機能を評価した。WTマウスではHFHS群のコントール群であるAIN群と比較してHFHS群でE/e’が有意に増加したことに対し、IL-22KOマウスではHFHS群のE/e’はAIN群と比較して有意な差は見られなかった。次にHFHS食による心肥大および心筋間質の線維化におけるIL-22の影響を評価した。WTマウスおよびIL-22KOマウスの両群でAIN群に比べHFHS群で心臓重量mg/脛骨長mmおよび線維化陽性面積が増加した。 これらの結果から、IL-22はHFHS食による心筋肥大および心筋間質の線維化に影響を与えずに左室拡張障害を起こすと考えられる。
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