研究課題/領域番号 |
22K16140
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
宮内 俊介 広島大学, 保健管理センター, 助教 (30910799)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 左心耳血栓 / 心房細動 / 心房心筋症 / 心原性脳塞栓症 / 線維化 / 内皮障害 / アミロイド / トランスサイレチン |
研究実績の概要 |
左心耳血栓形成に関する組織学的エビデンスが十分に明らかにされていない。我々は左心耳局所で血栓形成に関与するVirchowの3徴に関わる因子として、左心耳壁の線維化と心内膜内皮障害に着目した。これまでに確立された心内膜内皮障害の定量化手法はないが、研究の中で健常な内皮細胞に発現するCD31に対する免疫組織化学染色および、解析用ソフトウェアを用いた心内膜内皮障害の定量化手法を確立した。病理組織学的な検討により、左心耳血栓症例では非血栓症例と比較して左心耳壁の線維化および、心内膜内皮障害が進行していることを明かにした。また、心原性脳塞栓症の予測スコアとして確立されているCHADS2スコアが実際に左心耳組織の線維化、心内膜内皮障害の重症度と相関していることを明かにした(Miyauchi S, et al. JACC Clin Electrophysiol. 2023;9:1158-1168)。また、左心耳壁の線維化と心内膜内皮障害は発作性心房細動の段階では進行しておらず、持続性心房細動、左心耳血栓症発症に至る過程で進行することは心房心筋症の臨床経過と関連付けて明らかにした。さらに、左心耳壁へのアミロイド沈着と血栓形成の関連に着目し左心房壁へのトランスサイレチン(プレアルブミン)沈着を組織学的に検討し、左心耳血栓症例では非血栓症例と比較してトランスサイレチンの陽性率が高いことを示唆するデータを得た。心房細動に起因する脳梗塞、心不全による健康寿命の毀損が社会的問題となっており、心房心筋症の概念が着目されているが、これまでの成果は心房心筋症を議論する上で重要な基礎的組織学的エビデンスとなるものと考える。加えて、心筋組織からの効率的なDNA/RNA抽出手法を確立した。少数症例の左心耳血栓症例と非血栓症例でRNA sequensingを実施し、結果について現在解析中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
線維化、内皮障害に着目した組織学的検討は概ね終了し、査読付き英文誌に掲載済みである。アミロイド沈着と左心耳血栓形成との関連については追加の検討が必要であるが、本年度までの研究で左心耳壁へのアミロイド沈着と血栓形成の関連を示すデータを得ており、研究期間内の解析完了を見込む。左心耳組織を用いたRNA sequencingについては現在解析段階である。左心耳組織の細菌叢解析については少数例で検討したが、手法を含めてさらなる検討が必要な状況である。
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今後の研究の推進方策 |
左心耳壁に沈着するアミロイドの同定、定量化を実施し、心房細動から左心耳血栓発症に至る心房心筋症の経過におけるアミロイドの役割を組織学的に明かにする。また、左心耳血栓症例、非血栓症例におけるRNA sequencingの解析を完了し、有意な遺伝子についてrealtime PCR法で組織での発現を検証する。アミロイド沈着に関する検討、RNA sequencingについては研究期間内の解析完了を目標とする。
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次年度使用額が生じた理由 |
主にRNA sequencingを実施する検体数を一部削減したこと、16s RNA解析について次年度の検討課題としたこと等から次年度使用額が生じた。次年度使用額について、次年度に繰り越した実験計画に関わる支出に加えて、着実に実験計画を遂行するため、実験計画の内容に長けた実験補助員の派遣雇用を計画している。
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