研究実績の概要 |
本研究では、高齢の心不全患者における予後予測モデルを作成し、作成した予後予測モデルを元に、スマートフォンなどで簡便に利用できる診療補助ツールを開発することを目的とする。この診療補助ツールにより、臨床経験をデータで補われる事で、地域格差の少ない質の高い診療が実現される事が期待できる。 本年度は心不全患者レジストリであるJROADHF (The Japanese Registry Of Acute Decompensated Heart Failure)研究の特性を明らかにするために、JROADHF研究のデータを用いて左室駆出率 (LVEF) レベル別の長期予後を検討した。JROADHF研究は悉皆性の高いJROAD研究の対象者からクラスターランダムサンプリングにより対象者を決定しており、外的妥当性の高さを特徴とする。 当該研究では、収縮能の低下した心不全 (HFrEF, LVEF<40%)、収縮能の軽度低下した心不全 (HFmrEF, LVEF 40-49%)、収縮能の保たれた心不全 (HFpEF, LVEF≧50%) に分けて中央値4.3年間の追跡を行った。各サブタイプの性年齢調整死亡率は、それぞれ16.8、16.1、15.9/100人年(心血管死は9.2、7.8、6.6/100人年、非心血管死はそれぞれ7.6、8.3、9.3/100人年)であった。性年齢調整死亡率は、HFpEF患者に比してHFrEF患者で有意に高かった。いずれのLVEFレベルの心不全においても、心血管死亡率と非心血管死亡率の双方が、依然として高いことが示された。 当該研究は米国心臓病学会JACC誌の姉妹誌であるJACC Asia誌に掲載され (JACC Asia. Mar 07, 2023)、第87回日本循環器学会学術集会で公表した。
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