本研究では、T細胞のHexokinase 1(HK1)をミトコンドリアから脱結合させることがTh1細胞やTh17細胞の抑制を介し、圧負荷心不全進展を緩和させるかどうかを明らかとし、HK1をミトコンドリアから脱結合させる微小管重合阻害薬を圧負荷心不全に対する治療薬としての臨床応用に展開するための基礎となる研究を行うことを目的とした。 微小管重合阻害薬として、コルヒチンやノコダゾールを選択し、これらが、HK1をミトコンドリアから脱結合させるかを確認したが、コルヒチンにおいては明らかな効果は認められず、ノコダゾールにおいてHK1がミトコンドリアから脱結合されることを確認できた。ノコダゾールはin vitroで分化させたTh1細胞におけるミトコンドリア呼吸を抑制し、IFN-γ等の炎症性サイトカインの産生も低下させた。大動脈縮窄(TAC)手術による心不全モデルマウスにおいても、ノコダゾールの投与は、マウスの心臓及び縦郭リンパ節内のエフェクターT細胞の減少やCD4T細胞からのIFN-γ産生の低下が観察され、心不全に伴う炎症を抑制する可能性が示唆された。マクロファージ等他の血球細胞に対するノコダゾールの影響を排するために、HK1をミトコンドリアから脱結合させることが知られているVDAC1-based peptideを過剰発現するCD4 T細胞を作成し、同細胞を移植したRagⅡ欠損マウスを用いて、TACにおける圧負荷心不全の進展を抑制させることができるか検討中である。
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