研究課題
初年度は主に後ろ向き多施設データベース(ILLUMINATE-CS)の解析を行い、リスク因子同定に焦点を当て解析を行った。我々は心臓サルコイドーシス患者の心イベント、特に心不全の増悪による入院が多いことをILLUMINATE-CSの主解析論文(Eur Heart J. 2022;43:3450-3459.)において発表している。そこで、今回のこの心イベントは心不全既往歴のない心臓サルコイドーシス患者においても脳性ナトリウム利尿ペプチドの値によって予測できるかについて解析を行った。心不全の既往歴および診断時に心不全症状のない心臓サルコイドーシス患者238例において、中央値よりBNPが高値の患者をBNP高値群と定義し、主要評価項目は、全死亡、心不全入院、心室頻拍/心室細動(VT/VF)の複合とした。【結果】中央値3.0年の追跡期間中、複合イベントは59例で認められた。Kaplan-Meier曲線 では、BNP高値は複合イベントの発生と有意に関連した(Log-rank: P=0.004)。Cox比例ハザードモデルでは、ステロイド治療、eGFR低値、VT/VFの既往とともにBNP高値群が独立した複合イベントと関連する因子であり、この結果は心不全のないCSにおいても、診断時のBNPは将来の有害事象と独立して関連している事を示唆していた。本研究結果はJ Am Heart Assoc. 2022;11:e025803に原著論文として報告を行った。前向き多施設データベースに関しては、いかに悉皆性を持ったデータベースとするかについて共同研究機関との協議を進めており、現在コア施設を決め調査項目に関しての選定を行っている。
2: おおむね順調に進展している
後ろ向きデータベースを用いた心臓サルコイドーシス患者におけるリスク因子同定に関して順調であり、すでに2本の原著論文を発表し、現在2本の原著論文を投稿中である。その一方、前向き多施設データベース構築に関しては、そのデータベースの質をいかに担保するかという点と、悉皆性を持ったデータベースとするための具体的な方策について協議を重ねている結果、当初の進捗よりも遅れている。
現在ほぼ前向き多施設データベースに関してはコア施設と、悉皆性また持続性を持ったデータベース構築のためのスキーム決定ができつつあるため、2023年度は倫理委員会での承認、EDC構築、及び患者登録開始までを目標に協働機関とともに進めていく予定である。リスクモデル構築に関しては現在validationコホートとして使用するコホートの選定を行っており、それが見つかり次第リスクスコアの開発に着手する予定である。
多施設前向きデータベース構築が悉皆性を持ったデータベースとする事と、その質を十分に担保する事を重視しているため、その進捗が少し遅れ気味であるため、その分の予算が残額として今年度は残っている。現在コア施設や調査項目の選定を進めているため、この予算は次年度に繰り越しEDC構築を含めた、多施設前向きデータベース構築に必要な費用として適切に使用していく。
すべて 2023 2022
すべて 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 1件、 査読あり 2件、 オープンアクセス 1件)
Hypertens Res
巻: 46 ページ: 817-833
10.1038/s41440-022-01158-x.
J Am Heart Assoc.
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