研究課題/領域番号 |
22K16149
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
宇都 健太 日本大学, 医学部, 准教授 (80318071)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 血管石灰化 / Lysyl oxidase / 細胞外基質 / Collagen I |
研究実績の概要 |
本研究では、下肢動脈の石灰化病変における、細胞外基質(extra cellular matrix: ECM)の代謝および炎症機転の関与を解明することを目的としている。本研究の背景として、心血管および脳血管疾患罹患者の著増が挙げられる。これらの病変の一形態であるperipheral arterial disease(PAD)は、高齢者の日常生活動作(activities of daily living, ADL)の維持に支障を来たす。PADでは、粥状硬化性石灰化と中膜石灰化の両者が混在してみられ、これらの病変形成機序として、血管平滑筋細胞(vascular smooth muscle cell: VSMC)の骨芽細胞様細胞への形質転換や、VSMCアポトーシス等の関与等が多数報告されている。また、血管の主要構成成分はECMであるI型collagenやelastin等であり、血管石灰化もECMが主要構成成分であることから、生理的骨石灰化と類似している。しかし、血管石灰化病変とECMとの関連に注目した解析報告は少ない。 今回我々は、手術例・剖検例、モデル動物、培養細胞を用いて、血管内のcollagen代謝機転と炎症機転を包括的に分子病理学的解析し、下肢動脈の石灰化病変形成における、ECMの関与を解析する。またmicroCTなどのモダリティを用いて、実験的血管石灰化定量法に関する新規の評価法を確立することを目標としている。 令和5年度は、前年度に引き続き研究環境の整備、実験動物の調整を進めるとともに、動物への介入実験を施行する予定としている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
研究代表者は令和4年2月1日付けで、東京女子医科大学より日本大学医学部に異動となった。これに伴い、令和4年度は、本学での研究環境の整備、実験動物(ラット)の介入条件の再設定などを進め、令和5年度も継続した上で、動物への介入実験を施行する予定である。このため当該研究の進捗は遅延している。
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今後の研究の推進方策 |
8週齢のSprague-Dawleyラットに対し、①ワルファリン群(食餌1gあたりワルファリン3mgとビタミンK1 1.5mgを 2~4週間投与)、②BAPN群(食餌1gあたりワルファリン3mgとビタミンK1 1.5mgを 2~4週間投与に加え、BAPNを0.3%の濃度で混在)、および③Vitamin C群(食餌1gあたりワルファリン3mgとビタミンK1 1.5mgを 2~4週間投与に加え、vitamin Cを腹腔内投与)の3群を準備する。①群では血管および骨でのCa排出変動が生じ、血管で中膜石灰化が惹起される。②群では石灰化抑制がみられる。これらの3群について、血管内ECMについての解析を施行する。HE染色、von Kossa染色(石灰化)、Elastica van Gieson染色(弾性線維)を用いて、血球像とECMに関して組織像を定量評価する。またOCT包埋した凍結標本を作製し、免疫組織学的評価を施行する。これらの標本を用いてin situ ハイブリダイゼーションを施行し、血管中膜および外膜での石灰化病変形成に関与する因子の発現を半定量化する。 形態学的解析として、alizarin red染色と、組織透明化試薬を用いて、石灰化領域を明瞭に可視化、定量評価の簡便化を行う。またmicroCT撮像を施行する。これらの方法を用いて、石灰化局在の可視化と定量評価が可能であるが、介入条件、組織特性の差異等は、未だに条件設定できていないため、試薬濃度、撮像条件等を設定する。走査電顕および透過電顕を用いて、骨および血管のcollagen構造の変化、血管内のVSMC、リンパ球、マクロファージの形状を観察する。採取した大動脈および骨からタンパクおよびmRNAを抽出し、骨形成指標、ECM代謝指標および炎症性指標に関するRNA array解析を施行する。
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