研究課題/領域番号 |
22K16162
|
研究機関 | 群馬大学 |
研究代表者 |
鶴巻 寛朗 群馬大学, 医学部附属病院, 助教 (40781331)
|
研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
|
キーワード | TDAG8 / 気管支喘息 / pH感知性受容体 |
研究実績の概要 |
本研究では、気管支喘息の治療標的とされてきたサイトカインが関わる気道炎症とは異なるpH感知性受容体であるT-cell death-associated gene8(TDAG8)を介した新たな喘息のメカニズムを明らかにして治療標的となりうるかを検証することを目的としている。 これまでの研究でOvalbumin誘導喘息モデルマウスにおいてTDAG8が好酸球性炎症、気道粘液産生に関与する事が判明したことを発展させて、3年間の計画で以下の2つの研究を行う予定である。①細胞レベルで気道上皮細胞おいて低pH環境およびTDAG8が気道粘液産生に関与するメカニズムを明らかにする。②ヒトレベルで気管支喘息においてTDAG8の発現と臨床指標との関連を明らかにする。 2022年度は、気道粘液の構成成分であるMucin5AC(MUC5AC)産生において低pH環境が与える影響について、HEPES bufferの緩衝下に塩酸でpHを調整したRPMI1640培養液を用いて気道上皮細胞株(NCI-H292)をpH 6~7で培養し、Phorbol 12-myristate13-acetate刺激によるMUC5AC発現量を評価したところ、NCI-H292細胞株のPMA刺激によるMUC5AC発現が低pH環境において上昇することを確認した。また、siRNAを用いて同細胞株においてTDAG8をノックダウンできることを確認した。現在、低pH環境によるMUC5AC発現の上昇がTDAG8をノックダウンすることで変化する現象について実験を繰り返し行い、再現性を確認している。 また、ヒトレベルにおいてTDAG8発現が気管支喘息の臨床指標とどのように関連しているかについては、研究期間を通じて臨床検体および情報の収集を進めている。収集した検体の一部はカラム法を用いてmRNAを抽出し、RT-PCR法によりcDNAにした。今後は、検体が集まったところで、real time PCR法でTDAG8発現量を評価することを予定している。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初、2022年度は気道上皮細胞株におけるMUC5AC産生のシグナル伝達において、TDAG8が影響するポイントをセカンドメッセンジャーとして想定されるcAMPの変化およびその下流のシグナルを評価することを予定していたが、2023年度に予定していた気道上皮細胞株においてpHの変化によりMUC5AC産生が変化するか確認する実験を優先して行った。それによりTDAG8が気道上皮細胞株におけるMUC5AC産生に関与している確証を得られたため、今後はそのメカニズムについて研究を進めていくことを予定している。また、ヒトの気管支喘息における検体と情報の収集は概ね順調に進んでいる。計画は前後したものの、進捗状況はおおむね順調に進展していると考えている。
|
今後の研究の推進方策 |
今後の研究の推進方策として、現在までに気道上皮細胞株においてTDAG8をノックダウンしてpH変化によるMUC5AC発現量の実験を継続し、臨床検体の収集を進めることとこれまでに集積した臨床検体のmRNA抽出ならびにRT-PCR法によるcDNAへの変換を進める。引き続き、研究計画を順次調整して行っていく。
|
次年度使用額が生じた理由 |
2022年度に行った生物資源センター使用料金を2023年に支払う予定であること、COVID-19に伴う基礎実験の制限によりマウス実験および細胞実験に一部遅延が生じているため、使用する予定であった消耗品である試薬とプラスチック製品、サイトカインのELISAキット、RT-PCRおよびreal time PCRの試薬と各種抗体が未購入であることから、予算を下回っている状況である。今後、これらの支払いと当初は2022年度に購入を予定していた試薬を購入して、実験を進める予定である。
|