研究課題
本研究は、間質性肺炎合併肺癌(UIP_LADC)に高頻度に認めるゲノム異常の同定と、腫瘍促進的な微小環境の本態の解明を目指したものである。先行研究から得られた知見であるNKX2-1含む肺サーファクタント関連遺伝子群の発現量低下を及ぼす遺伝子異常を全ゲノム解析により染色体構造異常(SV)のレベルも含めて解析を目指している。当院の臨床手術検体症例を2例WGSに追加解析を行い、共同研究者が有するデータと統合を行っているところである。また、WGSによって得られる解析のメリットとして、1)点変異のみならず、挿入欠失を含むSVの検出が可能になること、2)エクソン領域以外における高頻度ゲノム異常の検出、が可能になることである。しかし、特に1)については、解析ソフトウェアによるばらつきが存在するため、いくつかのソフトウェアの比較を行い、本研究で用いる解析ソフトウェアの決定と検出基準等の設定のための予備的検討も行った。他研究で解析したWGSをコントロールとして検討したところSVの検出方法としては、Manta(Bioinformatics. 2016 Apr 15;32(8):1220-2)とGridds(Genome Res. 2017 Dec; 27(12): 2050–2060)を用いることにした。UIP_LADCの点変異情報から変異プロセスを推定するMutational Signature解析からは、喫煙者と同じ変異プロセスが示唆されたが、全変異数は重喫煙者と比較して少なく、別な発がん経路の存在が示唆された。
2: おおむね順調に進展している
症例数の増多が可能であったこと、解析手法の策定が進み、進捗はおおむね順調である。
染色体構造異常等の検出ソフトウェアの策定が終わったため、これまで取得したWGSの生データからSVを含む遺伝子異常を同定して、特に肺サーファクタントに関連する遺伝子群の変異集積性等に注目して解析を続ける
前年度までの発注で予備的解析が済み、またソフトウェアの比較は共同研究者とin-houseで可能であった。次年度も引き続き症例集積を継続して、WGSの追加解析を目指すとともに、研究成果の発表の経費として使用予定である。
すべて 2022
すべて 学会発表 (3件)