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2023 年度 実施状況報告書

間質性肺炎で誘導されるドライバー遺伝子異常に非依存的腫瘍促進的ゲノム異常の同定

研究課題

研究課題/領域番号 22K16166
研究機関東京医科歯科大学

研究代表者

本多 隆行  東京医科歯科大学, 東京医科歯科大学病院, 助教 (30827259)

研究期間 (年度) 2022-04-01 – 2025-03-31
キーワード肺腺癌 / 間質性肺炎 / ゲノム解析 / 腫瘍微小環境
研究実績の概要

本研究は、間質性肺炎合併肺癌(UIP-LADC)に高頻度に認めるゲノム異常の同定と腫瘍促進的な微小環境の本態の解明を目指したものである。先行研究から得られた知見であるNKX2-1含む肺サーファクタント関連遺伝子群の発現量低下を及ぼす遺伝子異常を全ゲノム解析により染色体構造異常(SV)のレベルも含めて解析を目指している。当該年度は当院および共同研究者が有する肺腺癌の全ゲノムシークエンス(WGS)データの統合を行った。
UIP-LADCとUIP非合併喫煙者LADCのゲノム異常を比較すると、喫煙者よりも優位に変異数(SNV、INDEL)が少なかった(p<0.0001)。また、UIP-LADCに特徴的な遺伝子変異としてNKX2-1領域の変異を有する症例がUIP-LADCの31%にのぼる一方で、通常型肺腺癌で認められるようなEGFRなどのドライバー遺伝子異常の症例は認めなかった。また、UIP-LADCの中にはNKX2-1領域に大規模な染色体構造異常(SV)を有する症例も確認した。RNAシークエンスも実施して、それらのゲノム異常がある症例ではNKX2-1のmRNA発現が低下していることを確認し、またタンパクレベルでも免疫染色を実施して失活の有無を確認した。
RNAシークエンスによるmRNA発現データから免疫細胞の分布を推定するソフトウェアであるCibersort(Nat Med. 2015)による解析結果からは、NKX2-1の変異の有無によりCD8陽性T細胞に差異を認めた。
UIP-LADCではNXX2-1領域の様々なゲノム異常が確認された。それらを取り巻く腫瘍微小環境では免疫監視を担うCD8陽性T細胞の分布がゲノム異常の有無により差があることが判明した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

症例数の増多が可能であったこと、腫瘍微小環境についても解析が進み、進捗はおおむね順調である。

今後の研究の推進方策

WGSによるデータの取得を継続し、共同研究者が有する通常型肺腺癌のWGSの比較を通じてUIP-LADCのゲノムの特徴の抽出を続ける。また、RNAシークエンスから得られた大局的な腫瘍微小環境の推定値については、病理学的にも確認をする予定であり、現在は手術検体の薄切、免疫染色について準備中であり、今後は結果が得られ次第、統合解析を進める予定である。

次年度使用額が生じた理由

当該年度の研究は、事前に取得したデータの解析を中心に行ったため、予想より経費使用が少なかったが、詳細な病理学的検討を次年度に開始する方針としたため繰り越しして、解析の消耗品等の購入にあてることにした。

  • 研究成果

    (7件)

すべて 2023

すべて 雑誌論文 (5件) (うち国際共著 1件、 査読あり 4件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (2件)

  • [雑誌論文] The possibility of mutations of RAS signaling genes and/or <i>TP53</i> in combination as a negative prognostic impact on pathological stage I non‐small cell lung cancer2023

    • 著者名/発表者名
      Honda Takayuki、Seto Katsutoshi、Endo Satoshi、Takemoto Akira、Tanimoto Kousuke、Kobayashi Masashi、Kitano Masatake、Sakakibara Rie、Mitsumura Takahiro、Ishibashi Hironori、Inazawa Johji、Tanaka Toshihiro、Miyazaki Yasunari、Okubo Kenichi
    • 雑誌名

      Cancer Medicine

      巻: 12 ページ: 19406~19413

    • DOI

      10.1002/cam4.6535

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Genome-wide association study of lung adenocarcinoma in East Asia and comparison with a European population2023

    • 著者名/発表者名
      Shi Jianxin、Shiraishi Kouya、et al.
    • 雑誌名

      Nature Communications

      巻: 14 ページ: 3043

    • DOI

      10.1038/s41467-023-38196-z

    • 査読あり / 国際共著
  • [雑誌論文] Identification of telomere maintenance gene variations related to lung adenocarcinoma risk by genome‐wide association and whole genome sequencing analyses2023

    • 著者名/発表者名
      Shiraishi Kouya、Takahashi Atsushi、、et al.
    • 雑誌名

      Cancer Communications

      巻: 44 ページ: 287~293

    • DOI

      10.1002/cac2.12498

    • 査読あり
  • [雑誌論文] 肺発生系譜上の転写因子TTF-1 / NKX2-1の変異と間質性肺炎合併肺腺がんの関連性2023

    • 著者名/発表者名
      望月晶史1,2), 本多隆行1,2), 白石航也1), 吉田幸弘3), 渡辺俊一3), 堀之内秀仁4), 谷田部恭5), 浜本隆二6), 宮崎泰成2), 河野隆志1)
    • 雑誌名

      日本肺サーファクタント・界面医学会雑誌

      巻: 54 ページ: 24-26

    • 査読あり
  • [雑誌論文] 間質性肺炎合併肺がんの発症機構2023

    • 著者名/発表者名
      本多 隆行, 望月 晶史, 河野 隆志, 宮崎 泰成
    • 雑誌名

      呼吸器内科

      巻: 44 ページ: 322-328

  • [学会発表] 受動喫煙が肺腺がんの発生・進行に及ぼす変異原性寄与2023

    • 著者名/発表者名
      望月晶史1,2、白石航也1、本多隆行2、角南久仁子1,3、宮崎泰成2、吉田幸弘4、渡辺俊一4、堀之内秀仁5、谷田部恭6、浜本隆二7、河野隆志1
    • 学会等名
      第64回日本肺癌学会学術集会
  • [学会発表] 肺腺がん発生における受動喫煙の変異原性寄与2023

    • 著者名/発表者名
      望月 晶史(国立がん研究センター研究所 ゲノム生物), 白石 航也, 本多 隆行, 角南 久仁子, 吉田 幸弘, 堀之内 秀仁, 谷田部 恭, 浜本 隆二, 河野 隆志
    • 学会等名
      日本癌学会学術総会

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公開日: 2024-12-25  

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