研究実績の概要 |
術前治療歴のない100例の肺小細胞癌を対象として、詳細に組織学的レビューを行い、転写因子(ASCL1, NEUROD1, POU2F3)およびYAP1の免疫染色、成分ごとのp53及びRb1の免疫染色を行なった。また、混合型小細胞癌の一部の症例についてはcomponentごとにDNAを抽出し、NGS解析を行った。 組織学的には、35例が混合型小細胞癌であると判断された。純粋な小細胞癌(n=65)と比較して、混合型小細胞癌は、サイズが有意に大きく、NEUROD1の発現が高く、分子マーカー発現の二重陽性の頻度が高かった。また、混合型小細胞癌の34%が、SCLCとそのパートナーとの境界が不明瞭な形態学的モザイクパターンを示した。混合型小細胞癌の非小細胞癌成分としては、大細胞神経内分泌癌(LCNEC)や扁平上皮癌、腺癌といった定型的な非小細胞癌の他、腺癌と扁平上皮癌との分離が困難な腺扁平上皮癌や横紋筋肉腫などが含まれるなど多様性がみられた。NEUROD1優性の混合型小細胞癌は、パートナーとして腺癌の割合が有意に高かったが、POU2F3優性の混合型小細胞癌は、パートナーとして扁平上皮癌の割合が有意に高かった。小細胞癌成分におけるYAP1発現は、混合型小細胞癌の80%、純粋小細胞癌の62%に認められ、しばしばモザイク状の発現を示した。また、混合型小細胞癌ではcomponent別解析においては、NGSでも免疫染色でも、TP53/p53の異常パターンが概ね一致していたのに対して、Rb1 gene/Rb1については、小細胞癌のみで異常が見られる症例が一定数あり、Rb1 gene/Rb1についてはcomponentごとの発現差が見られる結果となった。
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