研究課題/領域番号 |
22K16177
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
持丸 貴生 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 共同研究員 (60594570)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 難治性肥満喘息 / 酸化LDL |
研究実績の概要 |
今年度は酸化LDLのヒト好酸球に対する直接作用を検討した。酸化LDLは好酸球の刺激30分後のCD11b発現上昇とCD62Lの発現低下を誘導した。24時間培養時点における生存能を評価すると、酸化LDLがPI陽性の好酸球の割合を減少させており、生存能を延長させることが確認できた。同様の24時間時点で好酸球の活性化マーカーであるCD69発現を評価すると、IL-5と酸化LDLの共刺激がCD69発現の相乗的な上昇を誘導することが確認できた。以上の結果から酸化LDLは好酸球の接着応答を促進し、活性化とともに生存を延長させることでアレルギー性炎症を増幅する可能性が示唆された。 次にヒト好酸球の酸化LDLの受容体であるLOX-1の発現量の制御機構について検討した。好酸球をIL-33、TNF-alpha、IL-5で刺激し、RNAシークエンスで網羅的な遺伝子発現を検討した。その結果、IL-5の刺激ではなくIL-33とTNF-alphaの刺激によって、LOX-1の発現が上昇することが確認された。蛋白レベルでの発現もフローサイトメトリーによって検討し、TNF-alpha刺激によってIL-5の存在下で発現が増加することが確認された。 次にLOX-1の発現について私達が保有している慢性好酸球性副鼻腔炎の鼻茸の好酸球のRNAシークエンスのデータベースを用いて検討を行った。LOX-1の発現量は健常者の血中好酸球と比較して、慢性好酸球性副鼻腔炎の鼻茸の好酸球で著しく発現が増加していた。この発現上昇はIL-33とTNF-aで発現上昇が認められる遺伝子群の発現と正の相関を示しており、LOX-1の発現が疾患においてもIL-33とTNF-alphaによって誘導されている可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
特に問題なく経過している。
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今後の研究の推進方策 |
難治性肥満喘息への酸化LDLの効果を検討するため、好酸球に対する酸化LDLの効果について更なる検討を重ねていく。 ヒト好酸球に対する各種サイトカイン刺激下でのRNAシークエンスを行い、酸化LDLの好酸球への効果の更なるメカニズムを探索する。今年度の実績と合わせて論文として発表する予定である。 また、今回の知見を臨床応用するにあたり、より酸化LDLのシグナルが病態に関与する患者集団を特定する必要がある。我々は気管支喘息患者の好酸球でのRNAシークエンスを行い、酸化LDLによる治療効果が期待できる患者群を特定することも検討している。
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