研究期間を通じて、酸化LDLのヒト好酸球に対する直接作用を検討した。酸化LDLは好酸球の刺激30分後のCD11b発現上昇とCD62Lの発現低下を誘導した。24時間培養時点における生存能でも、酸化LDLがPI陽性の好酸球の割合を減少させており、生存能を延長させることが確認できた。24時間培養時点で好酸球の活性化マーカーであるCD69発現を評価すると、IL-5と酸化LDLの共刺激がCD69発現の相乗的な上昇を誘導することが確認できた。以上の結果から酸化LDLは好酸球の接着応答 を促進し、活性化とともに生存を延長させることでアレルギー性炎症を増幅する可能性が示唆された。 続いてヒト好酸球の酸化LDLの受容体であるLOX-1の発現量の制御機構について検討した。好酸球をIL-33、TNF-alpha、IL-5で刺激し、RNAシークエンスで網羅的な遺伝子発現を検討した。その結果、IL-5の刺激ではなくIL-33とTNF-alphaの刺激によって、LOX-1の発現が上昇することが確認された。蛋白レベルでの発現もフローサイトメトリーによって検討し、TNF-alpha刺激によってIL-5の存在下で発現が増加することが確認された。これらの結果に加えて、LOX-1の発現について我々が保有している慢性好酸球性副鼻腔炎の鼻茸の好酸球のRNAシークエンスのデータベースを用いて検討を行った。LOX-1の発現量は 健常者の血中好酸球と比較して、慢性好酸球性副鼻腔炎の鼻茸の好酸球で著しく発現が増加していた。この発現上昇はIL-33とTNF-aで発現上昇が認められる遺伝子群の発現と正の相関を示しており、LOX-1の発現が疾患においてもIL-33とTNF-alphaによって誘導されている可能性が示唆された。これらの研究成果について論文投稿準備中である。
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