研究課題/領域番号 |
22K16179
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研究機関 | 順天堂大学 |
研究代表者 |
吉田 隆司 順天堂大学, 医学部, 助教 (40933768)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 肺動脈性肺高血圧症 / 血管リモデリング / CD69 / 炎症細胞 / マクロファージ |
研究実績の概要 |
肺動脈性肺高血圧症(PAH)の病態進展には血管リモデリングが強く関与するが、現在リモデリングを標的としたPAH治療薬はない。血管リモデリングの進展において炎症が果たす役割は大きい。病的血管周囲に集積したリンパ球・マクロファージ・好中球などの炎症細胞の関与が示唆され、それらを由来とする炎症性サイトカインが血管の平滑筋・内皮細胞に影響を与え、リモデリング進展に寄与する。動物実験レベルでは、炎症性サイトカインを標的とした治療の有用性も示唆されており、抗リモデリング効果によるPAHの新規治療戦略として注目されている。 CD69分子は各種炎症細胞の早期活性化の指標として知られる。炎症局所に浸潤する炎症細胞に多く発現することから、CD69分子は炎症反応の誘導・維持に重要と考えられている。申請者は、PAHの血管リモデリング形成において、CD69陽性の活性化された各種炎症細胞が、「どのような時期に、どのような貢献をするのか」を解明するために、本研究を立案した。 VEGF受容体阻害薬と慢性低酸素曝露を用いてPAHを誘導したマウスモデルでは、野生型と比較して、CD69-/-マウスで右室収縮期圧の上昇や右室肥大の進行が有意に抑制された。CD69中和抗体を投与したPAH誘導の野生型マウスでも、同様の結果が得られた。さらに、末梢肺動脈のリモデリングに関しても、CD69-/-マウスおよびCD69中和抗体投与野生型マウスで、末梢肺動脈のリモデリング進展が抑制された。またPAH野生型マウス肺の蛍光免疫染色においてCD69陽性マクロファージが肺血管周囲に増加しており、それらがCD11b陽性の骨髄由来マクロファージであることを確認した。PAHの進展過程で、他の炎症細胞の肺組織中のCD69発現増加は明らかでなく、PAHの病態進展に関わるCD69活性化炎症細胞は、マクロファージの関与が主であることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
複数の活性化したCD69陽性炎症細胞がPAHの病態進展に関わると仮説をたてて実験を開始した。しかし、マクロファージ以外のCD69陽性炎症細胞の関与を示唆する結果が得られず、複数の手法を用いて検証を行っているため、当初の予定より進捗は遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの結果で、CD69陽性マクロファージがPAHの病態進展に強く関与していることが示唆されたため、今後は標的をマクロファージに絞って研究を進めていく予定である。専属の大学院生が研究に従事しているが、今後研究の進行にさらに遅延が生じた場合は、研究に関わる大学院生を増員することも検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究結果が一部想定と異なっていたため、実験計画の変更が必要となり、本年度に使用予定の研究費が、一部翌年に繰り越しとなった。新たに計画した研究が始まっており、研究予定期間内には、全ての研究費を使用する予定である。
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