本研究の最終目的は、高齢者の呼吸器疾患における病態メカニズムを明らかにし、新たな治療標的を探索することである。予備検討の結果から、申請者らは、気道上皮構成細胞が加齢によってその構成割合や表現形をダイナミックに変化させて、実際呼吸器疾患の病態に影響を与えている可能性が高いと考えている。 1. 2週齢、8週齢、35週齢の野生型マウス肺を用いて解析基盤の確立として、cell sortrerを用いて2型肺胞上皮細胞、気道上皮細胞などの組織構成細胞の分離方法の確立、sortingのためのgating作成を行った。 2. 解析基盤の確立ができた後に各気道上皮構成細胞をマウス肺から単離して、少数細胞からでも可能なキットを用いてRNA-シーケンスを行い、細胞の遺伝子発現の変化の網羅的解析を行った。結果として、2型上皮細胞では、年齢依存的に発現変動する遺伝子群が8週齢マウスをコントロールとして35週齢マウスは362遺伝子、2週齢マウスは747遺伝子、気道上皮細胞では年齢依存的に発現変動する遺伝子群が8週齢マウスをコントロールとして35週齢マウスは124遺伝子、2週齢マウスは1111遺伝子だった。以上の結果により、加齢による気道構成細胞の性質の変化は、幼若マウスと比較すると加齢マウスのほうが小さいことが示唆された。現在、35週齢マウスにおいて各細胞で変動が確認できた遺伝子群が関連するpathwayについて更に詳細に解析をすすめている。
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