本研究の最終目的は、高齢者の呼吸器疾患における病態メカニズムを明らかにし、新たな治療標的を探索することである。予備検討の結果から、申請者らは、気道上皮構成細胞が加齢によってその構成割合や表現形をダイナミックに変化させて、実際呼吸器疾患の病態に影響を与えている可能性が高いと考えている。 2週齢、8週齢、35週齢の野生型マウス肺を用いて各気道上皮構成細胞をマウス肺から単離して、少数細胞からでも可能なキットを用いてRNA-シーケンスを行い、細胞の遺伝子発現の変化の網羅的解析を行った。結果として、気道上皮細胞では年齢依存的に発現変動する遺伝子群が8週齢マウスをコントロールとして35週齢マウスは124遺伝子、2週齢マウスは1111遺伝子だったことより、加齢による気道上皮細胞の性質は、幼若マウスから壮年マウスの変化に比べて、壮年マウスから加齢マウスの変化のほうが小さいことが示唆された。本年度、さらに詳細に解析をすすめたところ、細胞内の過剰な鉄イオンの蓄積により引き起こされる細胞死のメカニズムであるFerroptosisにかかわるpathwayが、老齢マウスの気道上皮細胞で亢進していることがわかった。そこで、「老齢マウスでは、Ferroptosis亢進に伴い気道炎症が増悪する」という仮説に基づき、House dust mite喘息モデルを用いて好酸球性気道炎症に対してのFerroptosisの影響について検討を行った。
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