糖尿病における糸球体内皮障害に起因したアルブミン暴露が、ポドサイトのミトコンドリア形態に及ぼす影響を検証した。通常糖濃度で培養した不死化ヒトポドサイトを対照群とし、アルブミンを孵置した群(Alb群)、高糖濃度条件下にアルブミンを孵置した群(HG+Alb群)を用いて、ミトコンドリア形態の変化と細胞死を比較検討した。次にレトロウイルスを用いて、ドミナントネガティブ作用を及ぼすDrp1(K38A)とを遺伝子導入した不死化ヒトポドサイトを作成し、HG+Albを孵置しミトコンドリア形態の変化と細胞死を比較検討した。また、タモキシフェン誘導性ポドサイト特異的Drp1ノックアウトマウス(PodoDrp1f/fマウス)を作成し、STZを用いて糖尿病を誘発した。その後内皮グリコカリックスを消失させるノイラミニダーゼ(NA)を投与しアルブミン漏出を誘発させポドサイト障害を組織学的に検討した。結果、対照群と比較してAlb群ではDrp-1の発現減弱を伴うミトコンドリアの伸長を認めたが、HG+Alb群ではその反応は抑制されミトコンドリアの短縮を認めた。Alb刺激でもポドサイトのアポトーシスの増加は観察されたが、そのアポトーシスはHG群で有意に増強した。また遺伝子導入実験では、emptyと比較してDrp1(K38A)ではミトコンドリアが伸長し、アポトーシスは有意に減少した。動物実験ではNA投与1日目、2日目に両群とも同程度の尿中アルブミン排泄量の増加を認めた。投与3日目にはDrp1-/-マウスと比較してPodoDrp1f/fマウスではDrp-1発現減少とともにミトコンドリアの伸長を認め、WT-1陽性細胞の増加と足突起構造の改善を認めた。Drp-1の減少を介したミトコンドリアの断片化抑制がアルブミン刺激に伴う細胞障害に対して細胞保護的に働き、糖尿病状態がその保護機構を破綻させる可能性が示された。
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