研究課題
是正困難な低カリウム血症(低K血症)は、感染症や心疾患の死亡リスクを上昇させるだけでなく、低K血症性腎症を発症して慢性腎臓病(CKD)に進展しうる。低K血症性腎症は、組織学的に尿細管間質の細胞死・炎症・線維化や嚢胞形成を特徴とするが、その発症機序は不明である。インフラマソームは細胞内カリウム流出によって活性化され、炎症と細胞死を誘導することから、低K血症におけるインフラマソームの関与を考えた。本研究では、K欠乏食を用いて低K血症動物モデルを作製し、その解析を行った。K欠乏食により、すみやかに腎組織のK低下が認められた。次に、野生型とインフラマソーム関連分子(NLRP3、ASC、Caspase-1/-11)の各ノックアウトマウスを用いて比較した。野生型では腎障害と炎症が認められた一方、NLRP3欠損、ASC欠損マウスでは腎障害と炎症が著減したが、Caspase-1/-11欠損では軽減しなかった。この炎症細胞浸潤は、免疫担当細胞のNLRP3・ASCに依存しないことが判明した。レポーターマウスの実験では、インフラマソームの形成が認められず、インフラマソームに依存しないNLRP3・ASCの働きが考えられた。マウスとヒトの初代細胞を用いた細胞実験において、低K培地によって炎症経路が活性化し、低K環境自体が炎症を惹起することがわかった。またこの炎症は、NLRP3・ASC依存的であることも判明した。さらに低K環境に関与する分子機序を解明し、ヒト低K血症性腎症の解析を行う予定である。
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Biochemical and Biophysical Research Communications
巻: 686 ページ: 149158~149158
10.1016/j.bbrc.2023.149158
Journal of Molecular and Cellular Cardiology
巻: 180 ページ: 58~68
10.1016/j.yjmcc.2023.05.003