研究課題/領域番号 |
22K16227
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研究機関 | 昭和大学 |
研究代表者 |
加藤 憲 昭和大学, 医学部, 講師 (20644305)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | iPS細胞 / 腹膜中皮細胞 / 腹膜透析 |
研究実績の概要 |
背景:腹膜は腹膜中皮細胞(PMC)から構成されており、その半透過性の性質を利用して腹膜透析を行うが、透析液に長時間さらされることで腹膜の癒着が起こる。PMCを補充することで、癒着が改善したという報告もあるが、そのために十分な量のPMCを入手することは困難である。そこで、我々はヒト人工多能性幹細胞(hiPSC)からPMCを分化させる方法を開発した。 方法:hiPSCをFGF2とBMP4の存在下で、まず中間の側板中胚葉(LPM)ステージまで分化させた。その後、Wntおよびレチノイン酸シグナル伝達経路の活性化とBMP阻害により、PMCに分化させ、PMCマーカー蛋白質の発現、半透過性および創傷治癒能を評価した。 結果:誘導されたPMC(iPMCs)はPMCマーカーの蛋白質が発現していた。iPMCsを継代すると、低分子には透過性を示すが、高分子には低透過性しか示さない均一な成熟細胞集団が形成された。さらに、iPMCsは再生・修復特性を有していることをin vitroおよびin vivoで確認し、マウスの腹膜に生着も得られていることが分かった。 結論:本法により作製したiPMCsがヒト腹膜機能の研究に役立ち、腹膜透析患者の細胞治療に使用できる可能性を示唆している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画通り、iPS細胞より誘導した腹膜中皮細胞のマウスへの生着を確認出来ている。
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今後の研究の推進方策 |
腹膜透析においてiPS細胞から誘導した腹膜中皮細胞の細胞移植が有用かどうかを検討する。そのためまずはマウスにおける腹膜透析モデルを作成し、メチルグリオキサールで化学的に障害を腹膜に与えて腹膜機能が低下することを確認する。その後細胞移植を行い機能の改善がみられるかを評価する。
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次年度使用額が生じた理由 |
細胞培養、分化誘導試薬の使用のために必要となる金額が想定よりも少なく実験可能であった。今後、当初の計画で行う予定であった免疫不全マウスの購入、解析試薬への購入のために次年度で残額を使用する。
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