構造的特徴に着目した「部位別腎病理スコア」と機能的特徴に着目したメタボローム解析を組み合わせた評価系を確立、幅広い腎疾患の予後推定を行うため、今年度は名古屋大学腎臓内科学の関連病院から収集する腎生検患者におけるアウトカム情報収集システムの設定と腎生検情報の標準化を進めた。ネフローゼ症候群を対象とした部位別病理スコアの開発と微小変化型ネフローゼ症候群の予後予測ついて取り組んだ。研究データベースから臨床情報、病理組織情報、そして検体検査データを抽出し、まずは病理標本と糸球体濾過率ならびに蛋白尿との横断的な関連を整理した。また、微小変化型ネフローゼ症候群に対しては治療反応性の予測として従来から用いられてきたSelectivity indexについて、腎機能障害時に診断精度が低下することを見出した。今後、他病態や他のネフローゼ症候群を来す疾患について、診断予測、治療反応性予測の精度を向上することを目指す。 本研究の意義・重要性については、様々な腎生検所見をスコア化することで、簡便な予測モデルを立てることを可能とした。また、アウトカム情報の収集システムにより、これまで病院への物理的な訪問や事務的な手続きを要してきた臨床情報の収集を簡便化し、情報漏洩のリスクを減らしながら研究効率を高めることにつながると考えられる。アウトカム情報の収集体制が確立し、情報収集が行えるようになることで、希少疾患であるネフローゼ症候群、腎炎症候群の組織情報とアウトカム情報を豊富に取りそろえるデータベースが完成する。これにより新薬の開発や研究の実施可能性事前調査などを容易にすることができ、さらなる研究の発展に寄与するであろう。
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