まずMondoA蛋白の腎組織分布について、ヒト腎生検検体を用いて染色性を確認したところ、S1・S2セグメント(皮質)に有意に染色され、S3セグメントはやや低下、髄質や糸球体への染色性はかなり低いことが分かった。 MondoAのPodocyteへの影響につき、Podocin-Cre(Podocyte特異的にCreを発現するマウス)とMondoA floxマウスの掛け合わせによりPodocyte特異的MondoA不全マウス(KOマウス)を作成し確認したが、若年・高齢・糖尿病モデルにおいてもControl群と比較して組織学的変化や尿検査異常はみられず、電子顕微鏡検査においても有意なミトコンドリア機能傷害などは呈さなかった。一方で、体重の変化は6か月齢程度からみられ、KOマウスにおいて有意に低下がみられていた。その原因について検討したが、原因の同定には至らなかった。KOマウスより単離した糸球体におけるオートファジーフラックスの検討では、KOではフラックスが低下する傾向はあったものの、有意な減少までは確認できなかった。単離糸球体の培養による代謝物の測定では、LactateやPyruvateの上昇がみられ、解糖系が上昇していることは判明したものの、糸球体傷害に大きな差を認めなかったことから、PodocyteにおけるMondoAは、代謝制御は担っているものの、形態変化や代謝変化を大きく制御する因子とは言い難いことが判明した。 一方、同じ腎構成細胞である近位尿細管細胞では同様解析(近位尿細管特異的ノックアウトマウスの検討や同細胞におけるオートファジーの評価)において、有意に変化がみられ、代謝変化によりミトコンドリア機能の低下に関わることが判明した。MondoAは近位尿細管細胞の維持に密接にかかわることが判明した。
|