研究課題/領域番号 |
22K16255
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
枝光 智大 東北大学, 医学系研究科, 学術研究員 (80907709)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | アトピー性皮膚炎 / Nrf2 |
研究実績の概要 |
生体の恒常性維持に重要な転写因子であるNrf2は、Keap1とβTrCPを介したプロテアソーム分解を受けており、定常状態においてNrf2活性は抑制されている。興味深いことに、扁平上皮においてKeap1とβTrCPによる分解経路を遮断したNrf2活性化マウスは、痒みを伴う皮膚症状を呈する。本研究では初めに、Nrf2活性化マウスの皮膚症状が、ヒトのアトピー性皮膚炎に類似するか調べた。本マウスは、タモキシフェン(Tam)投与1週以降に掻破行動と皮膚病変が出現し、4週後まで悪化、その後12週時点で軽快した。組織学的に不全角化、表皮肥厚、表皮細胞間浮腫、真皮への炎症細胞の浸潤を伴い皮膚炎の特徴を有した。また、Tam投与4週後において、血清IgE値と経表皮水分蒸散量(TEWL)が対照マウスと比較して有意に増加し、アレルギー性炎症と皮膚バリア機能障害が存在することを示した。これらの結果から、Nrf2活性化マウスはアトピー性皮膚炎の特徴を有することが示された。次に、表皮におけるNrf2活性と皮膚炎の経過の相関を評価するために、Nrf2標的遺伝子でありNrf2活性の指標となるNqo1 mRNAの発現を調べた。表皮におけるNqo1 mRNAの発現は、Tam投与1、2、4週後において、対照マウスと比較して約10倍増えたが、皮膚炎が軽快する12週時点において約1.1倍まで低下した。皮膚炎とNqo1 mRNAの経過が一致することから、皮膚炎の発症にはNrf2の活性化が関わることが示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Nrf2活性化マウスの繁殖が順調に進み、皮膚症状や遺伝子発現の解析を進めることができた。
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今後の研究の推進方策 |
Nrf2活性化マウスで発現変動する遺伝子を網羅的に解析するためRNA-seqを実施する。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初の計画より試薬や消耗品の使用が少なく済んだため次年度使用額が生じた。 本年度は、RNA-seqに必要な試薬、動物施設利用料、論文投稿料、学会参加費に使用する計画である。
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