研究課題
全身性強皮症(systemic sclerosis; SSc)は皮膚と内臓諸臓器に線維化をきたす予後不良な自己免疫疾患である。近年、SScの病態形成にB細胞が重要であることが見出され、抗ヒトCD20ヒト・マウスキメラ抗体であるリツキシマブによるB細胞除去療法が新規治療として注目されている。しかし、リツキシマブにより末梢血中のB細胞がほぼ完全に除去されるのにも関わらず治療効果に乏しいSSc患者もしばしば見られ、組織中のB細胞がリツキシマブに除去抵抗性である可能性が示唆された。しかし、SScの組織中B細胞について検討した研究はなく、除去抵抗性の組織中B細胞の病原性や、抵抗性の機序、治療ターゲットとしての可能性は不明である。本研究では、自己抗原反応性B細胞をもつ独自のモデルマウスを用いて、抗CD20抗体による除去に抵抗性の組織中B細胞を解析している。また、SScの組織微小環境が組織中B細胞の除去抵抗性に関与する可能性について、B細胞の生存と局在に重要なCXCL12-CXCR4軸について検討中である。さらに、CXCL12-CXCR4軸を阻害することで組織中B細胞の除去率を向上させた、より有効なB細胞除去療法が実現できないか、臨床応用の可能性を模索している。
2: おおむね順調に進展している
本研究では、topo I誘導SScモデルマウスを用いて、抗CD20抗体による除去に抵抗性の組織中B細胞に関して、その病原性、CXCL12-CXCR4軸の関与、および、治療ターゲットとしての可能性を明らかにすることを目的とする。今年度の進捗を以下に記載した。1) 抗CD20抗体による除去に抵抗性の組織中B細胞の病原性の解析野生型マウスにtopo I抗原を免疫し、topo I誘導SScモデルを作成し、組織中および末梢血中のTopo I反応性B細胞を確認した。また、topo I誘導SScモデルに抗CD20抗体を腹腔内投与し、皮膚・肺の線維化に対する効果を病理組織学的に確認した。さらに、抗CD20抗体の投与7日後に、骨髄・脾臓・肺・末梢リンパ節・末梢血を回収し、 蛍光標識されたtopo I抗原に結合するB細胞をフローサイトメトリーで解析した。2) 組織中B細胞におけるCXCL12-CXCR4軸の解析topo I誘導SScモデルの骨髄・脾臓・肺・末梢リンパ節におけるCXCL12の発現をreal-time PCRおよび免疫染色で評価した。さらに、topo I誘導SScモデルにおける前述の各組織中のtopo I反応性B細胞について、CXCR4の発現をフローサイトメトリーで解析した。
引き続き、抗CD20抗体による除去に抵抗性の組織中B細胞の病原性の解析と組織中B細胞におけるCXCL12-CXCR4軸の解析を進め、topo I誘導SScモデルマウスを用いて、抗CD20抗体による除去に抵抗性の組織中B細胞に関して、その病原性、CXCL12-CXCR4軸の関与、および、治療ターゲットとしての可能性を明らかにしていく予定である。本研究は、SScに対するB細胞除去療法を考える上で組織中B細胞の除去が重要であることを見出し、CXCL12-CXCR4軸が組織中B細胞の除去抵抗性に関与することを明らかにしうる。さらに、組織中B細胞をより効率良く除去する具体的なアプローチのひとつとして、CXCL12-CXCR4軸のシグナルを阻害するAMD3100を抗CD20抗体と併用する、新たなSScの治療法を提示できる可能性がある。
すべて 2023 2022
すべて 雑誌論文 (8件) (うち査読あり 8件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 5件)
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